13話 デイリー 挿絵あり
ツキは事実上俺であり、俺は雁木 真利。論法的にもおかしくないけど、現実的にはおかしくあってほしかったなぁ・・・。いや、おかしいから俺はツキに成り・・・、生体データを詐称と言うか、面倒で健康診断データをツキのデータ入れ替えたのは俺でしたね・・・。
う〜ん・・・、大元と言うか政府的には狐娘はいてもいいのだろうか?いて良いんだろうなぁ〜。なにせ俺は健康で医者としても研究対象であっても不味い存在ではないはず!だって医療ポッドに入れられたと言う事は治療をしたと言う事で、その結果に納得するかは医者と本人の問題になる。
そして俺は納得したしモル狐となる事にも納得してしまった。まぁ、モル狐はいいよ。この姿でなにが出来ると聞かれると、分かりませんとしか言えないし。う〜ん・・・。本当に出来る事ってなに!?別に献身的になにがする気はないよ?コレでも社会人で酸いも甘いも噛み分けるだけの経験はしたと思う。
そうなると逆に出来る事って言うよりも、活かせる事を探す方面になるわけで・・・。女性2人から綺麗とか可愛いと言われるなら、リサーチすれば相対的な容姿が分かる。男性目線と女性目線でツキが綺麗とか可愛いと言われるかは分からないけど、たった1つ言える事は男性と女性では可愛いの基準は違うと言う事。
けど俺を綺麗とか可愛いと言うなら共通認識的な部分、例えばくりくりとしたお目々とか、ちょっと高めな子供っぽい声とか言う部分がそう思わせてるのかな?確かに低身長で男目線でも可愛いと言うか、ゲームをプレーするに辺り個人的に嫌にならないキャラメイクをした。う〜ん・・・、医療機器としてのリサーチなんかはするけど、流石に容姿やらは専門外だしなぁ・・・。
この前の撮影をアップロードして反応を見てみる?それと並行してフレに聞いてみるかな?ネカマネナベの判定は厳しいけど、客観的な容姿の醜美と言うのは結構今後に関わってくるし・・・。美人だから能力が高いと言うわけではないけれど、美人なら他人から選ばれる場面はあるのよね・・・。
「とりあえずサインも終わったし、たまには昼からININしようかな?どの道ここからは出られないし。」
パコッとヘッドギアを被りゲームにIN。ついつい普通の耳にイヤホン付けようとしたけど、考えてみれば狐耳だから頭の上の耳にイヤホン入れないといけないんだよな。骨伝導で対話するシステムもあるけど、先生が持ってきたのは会話も脳波でやる奴みたいだし、結果としてイヤホンタイプにしたんだろう。
ヘッドホンはこれから先使えないよなぁ・・・、耳の位置が違うし。昼間にINする事は殆どなかったけど、オーランドには割と人がいる。俺の場合休みの日は外出する事も多かったし、まとまった休みには旅行したりと、ゲームをするにしても出先含めて落ち着いて出来る夜がメインだった。
「おっ、データ照合完了通知とメンテナンスのお詫びが来てる。」
メンテナンスはいいとして、データ照合完了と言う事はツキと俺のリンクに違反はないと言う事だろう。生体データはいじれないものの、ゲームデータを弄ったチーターなんかはたまにいるし、バグを装っつアイテム増殖なんかをする奴もいる。
まぁ、たまに運営が可愛いチーターに賞金かけてPKイベントなんかをやったりするけど、噂ではそのチートをゲームシステムとして組み込むかのバランス確認をしてるんじゃないかとも言われてるのよね。
「イベント通知は毎回18時発表だし、とりあえずデイリーやって・・・。配信やるかは別として撮影だけしとこ。ドーモ=視聴サン。オーランドでたまに見かけたり捕獲される巫女狐のツキです。今日はデイリーミッションをしてから・・・、何しようか?」
歩法を更にしてもいいし、魔法はスキルだからガンガン発動出来る。剣やらと違って魔法関連の試練は非常に地味なんだよなぁ。魔法の誘導性上げたりとかMP管理に比重置いたりとか。それをするくらいなら身体を動かそいかな?
「なにするかは後から決めるとして、先ずはデイリーからやりまーす。」
デイリーミッションを確認すると、ゴブリンとスライムを合わせて10匹討伐とある。基本的にデイリーミッションって初心者でも攻略出来る難易度だったり、お使いだったりするから難しい事はない。街を歩きながら他のプレーヤーやらNPCを見るけど尻尾を隠してる亜人やらはいないなぁ・・・。
ジャンル的にファンダジーSFゲームだから何かしらの変わった方法がないかとも考えたけど、ここだと亜人は亜人として歩いてるんだよね・・・。近くの暗い森へ入りゴブリンとスライムを探すとしよう。
「あんまり役に立たない初心者向け解説として、ゴブリンやらスライムから剥ぎ取りするなら剣やハンマーで綺麗に倒してからから剥ぎ取りするのがオススメです。ちょうどゴブリンが3体来ましたね。来い大麻!」
緑の肌にボロい短剣に腰巻き。アーチャーやらシャーマンやら場合によっては騎乗して空を飛ぶゴブリンだけど、分類ザコは如実でAIの頭の悪さとステータスの低さが拍車をかける。魔法で消し炭にすると、すぐにポリゴンになって消えてしまうけど剣なんかで倒すと一定期間死体が残る。魔法討伐は完全ランダムだけど、採取するなら死体は残した方がいい。
「とりあえず首チョンパしてから採取するとしましょう。」
ナイフを構えてい飛びかかって来た先頭のゴブリンの首を狙って大麻を差し込み、それに構わず姿勢を低くして走って来たゴブリンを尻尾を前に・・・、なんだろう?特に本物の尻尾を動かさないのに本物の様に動く?
一瞬の戸惑いはあったけどジャストガード発動のダメージでゴブリンが血を吐いて倒れ、残る一体も検証の為に尻尾で倒す。前は動かなかったナインテールが結構自在に動く?ジャストガードして役目を終えた2本の尻尾はなくなってしまったけど、お尻かムズムズしつつ再生しているのが分かる。
えっ?リアルに尻尾生えたからこっちでも動かせるの?試しにナインテールを装備覧から外すけど、尻尾はそのまま10本ある・・・。データ照合的に言えば俺の姿は確かにツキの姿なので、装備を外しても尻尾は10本・・・。変な疑いを掛けられたくないからナインテールは外さんとこ。
「よくよく依頼のあるものは爪や耳、後は肝とかですね。普通に採取するとランダムですけど、ナイフ持ってちゃんと部位の近くで採取すると大体その部位が取れます。」
今回は討伐だったけど、この前爪が足りなかった事を思い出して手の近くで採取。ナイフを指に突き立てて指を拾うけど、運営の悪意のせいか肝が1つ取れている。レアドロップと言えばレアドロップだけど、慎重に指を採取したのに!
「人がアバターを操作して、それしか採取出来ないだろうと思っても、運営神はランダム要素を投げ込んできます。今回はレアドロップの肝が手に入ったのでお礼に大麻を振っておきましょう。おのれ運営神!やってくれたのぉ・・・。次はスライム探しま〜す。」
暗い森を走るとスライムよりもゴブリンの方が多い。水辺近くに行けばスライムも増えるけど、多分ゴブリンの巣穴でもあるのかな?定期的に森やらにはゴブリン集落が出来てそこからワラワラゴブリンが出てくるし。
「うぉ!いや・・・、ビコン!?キャラクターは定まってないので適当に流して下さい。可愛い驚き方ってなんでしょうね・・・。」
ゴブリンを魔法で倒していたら頭上からジャストガード音が!ゲーム内音声は本人の聞こえ具合を元に参照する、なので頭上に耳があるから、そんな所でジャストガードが発動するとけたたましい音が!尻尾は再生完了してるけどさっきのジャストガードでスライムは消し飛びスライム液がドロップ。
「採取する前にドロップ品を献上して来たと言う事は、先程大麻を振ったのが運営神に届いたからでしょう。ガッデム!採取動画撮ってるんだよ?空気読んでよ運営神!」
そんな悪態を付きつつ湖畔の畔に行くとスライムが・・・、なにやら大量繁殖してらっしゃる。たまにあるモンスターの大繁殖か・・・。原因は2通りで運営が単純に増やすパターンと・・・。
「かかってこいスライム!体液とか投げ捨ててかかってこいよスライム!」
初心者が狩りすぎてリポップ時間が重なった場合等。レベル上げで集団狩りなんかをしている時はよく起こり、それを狙って初心者を交えて集団で狩るパーティーなんかもいる。まぁ、その初心者は中心に置かれての接待プレーだったりするから、自力を上げるのは別の話になってくるのよね。
叫んでいる人は見た感じ初心者と言うわけではないけど、ベテランと言うわけでもなさそう。まぁ、スライムに負けるかと聞かれると迷うし、ストレス発散に暴れる人もいる。
実際叫んでる人はスライムに乱打入れたり蹴っ飛ばしたりと、サンドバッグ代わりにしている様にも見えるしね。ボクサーとかがこう言った回避訓練するとか聞いた事ある、離れた所で自分の狩をするとしようかな。
「さて、スライムですけど生意気な事に吸収再生と物理半減を持ってますね。属性スライムもいますけど、それはおいておくとして有効なのは採取と魔法です。試してみましょう。あと、なんか叫んでる人は無視です無視。」
近くのスライムをムンズと掴み取って反対の手をスライムの中に突っ込む。そうすると指に核が触り、そのまま引きずり出すとスライムは死んでしまった。
「核を有するモンスターで小さな物は核抜きで即死クリティカルが出せます。まぁ、レベルの関係上下手に高レベルモンスターにやると自分が大ダメージ貰ったり、即死が無効になるのであくまで参考技ですね。前に集合ビッグスライムに対してやったら美味しく食べられました・・・。」




