表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

プロローグ:神と人と、そして何でも屋

「成宮さーん! また神様がケンカしてまーす!」


朝の商店街を駆け抜ける少女の声が、どこか呑気に響いた。

曇り空の下、洗濯物の干されたアパートのベランダで、男はため息をついた。


「……朝っぱらからマジかよ。せっかくカレー仕込んでたのに」


エプロン姿の男、成宮なるみや 創真そうまは、カレー鍋の火を止めると、迷いなく屋根から飛び降りた。3階建ての建物からである。


だが着地の衝撃はまるで感じさせず、靴音ひとつ立てずに地面に降り立つ。周囲の通行人も「またか」と笑うばかりで、誰も驚かない。

それが、町一番の“何でも屋”成宮創真の日常だった。


この世界には、人と神が共に暮らしている。

……とはいえ、神々は決して全能でも完全でもない。感情的で、気まぐれで、時に人間よりも手がかかる存在だ。

そんな神々の失敗を尻拭いするのも、創真の仕事のひとつである。


現場に着いたとき、すでに通りは一部が凍りつき、雷が建物の屋上に落ちていた。

「またお前らか……」


氷結を操る女神と、雷を落とす天の神――喧嘩常連のコンビが、空中で睨み合っている。


「創真っ! こいつが私のアイス食べたのよ!」

「違うわ! お前のアイスが俺の冷蔵庫に勝手に入ってたんだろ!」


全力の神力で繰り広げられる、どうでもいい冷蔵庫バトル。

創真は心底めんどくさそうに頭を掻いた。


「おい、二人とも――」


声と同時に、地面を踏み鳴らす。

その一撃で、周囲に無音の風圧が走り、二柱の神の動きがピタリと止まった。


「仲裁は一回千円な。あとで払っとけ」


バリバリと光る雷と氷の槍が一瞬で霧散する。

神でさえも逆らえない、“何でも屋”の重み。

神の世界でも人の世界でも、創真の名は知れ渡っている。


なにせ――彼はただの人間でありながら、誰よりも頼りになるからだ。


だが、そんな彼に――この日、小さな変化が訪れる。

空から落ちてきたのは、金色の瞳を持つ、ひとりの小さな少女。

そしてそれは、この世界の均衡を、ほんの少しだけ揺らすことになるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ