突然届いた招待状②
ややぽっちゃりのマニエラは、屋敷から少し離れただけの東屋まで駆けてくるのもキツイようで、ウィンディアの元に来る頃にはゼェーゼェーと激しく肩で息をしていた。
「おっ・・・、おっ・・・、お嬢様っ・・・。」
マニエラはウィンディアの座る椅子の横で、両ひざをつかんで中腰になっていた。
「マニエラ・・・。落ち着いて。少し息を整えたほうがいいわ。」
ウィンディアが心配そうに、マニエラの腕を袖越しに擦った。
「でっ・・・ですがっ・・・。」
ここでマニエラはゴクッと唾を飲み込んだ。ウィンディアと2人のメイドはどうしたものかと互いに顔を見合わせていたが、背の高いメイドがハタと気がついて、近くに停めてあったティーワゴンでお茶を淹れ始めた。
横目で見ていたウィンディアは、そのメイドにアイコンタクトしながら頷いて見せた。背の高いメイドもウィンディアに頷き返す。
少し冷めたお茶ではあったが、今のマニエラには逆にそちらの方が飲み易そうではあった。ウィンディアはマニエラの背中の向こう越しに、背の高いメイドからティーカップをソーサーごと受けとると、マニエラに声をかけた。
「さっ、マニエラ。これを飲んで。落ち着いてからどうしたのか話してちょうだい。」
「あっあっ・・・お嬢様・・・すみません。」
マニエラは中腰のまま、ウィンディアへと顔を上げた。
「いいから、ほら、飲んで。」
マニエラはウィンディアからティーカップをソーサーごと受けとると、ゆっくりとその場で立ち上がった。
「では、失礼して・・・いただきます。」
マニエラはおちょぼ口になって、お茶を少量、口に含むと、味わうかのようにゆっくりと飲み込んだ。ウィンディアと2人のメイドたちはその様子をじぃっと見守っていた。
マニエラは喉が乾いていたのか、しばしの間を空けてからもう一口、二口とお茶を飲んでいった。その間、誰も口を開かなかった。ただ、マニエラが落ち着くのを待った。
ようやくマニエラが落ち着いたのか、背の高いメイドにティーカップを手渡すと、ウィンディアに向き直って、ドレスの下に隠れて見えはしなかったが、右足を一歩退いて一礼した。
「お嬢様、お気遣いいただき、ありがとうございました。お陰さまで、このマニエラ、だいぶ落ち着きました。」
「そう。それは良かったわ。・・・それで、どうしたの?マニエラ?お父様も何か慌ててるご様子がそこの窓から見えたんだけど?何かあったのかしら?」
【作者より】
【更新履歴】
2025.3.14 Fri. 15:45 再掲
2023.10.12 Mon. 1:58 読み上げアプリ向け修正
2023.9.3 11:02 Sun. 再掲