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突然届いた招待状①

半年前。


サンヘルム(こく)の北西にあるバルテシア領。ほぼその中央にある領都(りょうと)バルトンの、フォンテの屋敷クレイトンでは、ちょっとした騒動が起こっていた。


一貴族(いちきぞく)の屋敷に呼称が付いているのは、妙だと思われるかもしれないが、サンヘルム国内(こくない)では、公共の施設や王侯貴族に由来する建物、あるいは特徴的な自然の創造物や組織団体などに、古語を用いて名付けが行われるのが常だった。ただ、建物の(あるじ)や組織の長自身が命名することは極稀(ごくまれ)で、長い年月をかけて、その周囲で暮らす国民たちから、いつの間にか、そう呼ばれるようになる、といったことがほとんどだった。


フォンテの屋敷クレイトンも代々のバルテシア領主から継承され続けているもので、花卉産業(かきさんぎょう)が主流なバルテシアと、クレイトン敷地内で常に咲き誇る美しい花々の景観にちなんで、人々から『花満(はなみ)つる(やかた)』という意味で名付けられたものだった。


クレイトンはちょうどその時、淡い薄紫色(うすむらさきいろ)をしたラベンダーが咲き誇っていた。


庭の一角(いっかく)、屋敷のすぐ近くに(もう)けられていた東屋(あずまや)(した)で、家庭教師から出されていた宿題をしていたウィンディアは、屋敷内(やしきない)の騒ぎにすぐに気が付いた。屋敷の窓の向こうに急ぎ足で歩いているフォンテの姿を見かけたからだ。


「あら?お父様があんなに慌ててるなんて珍しいわね。何かあったのかしら?ね?」


ウィンディアはペンを持ったまま、(そば)(ひか)えていた若いメイド2人に同意を求めた。


「さぁ?なんでございましょう?」


首を(かし)げる背の低いメイド。


「お嬢様、お許しいただけるのでしたら、(わたくし)が確認しに行ってまいりましょうか?」


ソワソワした様子でウィンディアの足元で(ひざまず)く、やや背の高いメイド。


ウィンディアはペン軸の先をピタピタと唇に当てながら、しばし考えていたようだったが、すぐにそのペンをテーブルの上に置いた。


「・・・そうね。ちょっとお願いしようかしら。何か大事(だいじ)があることだったらお父様が心配だもの。」


「はい。承知いたしました。」


やや背の高いメイドはしゃがんだままウィンディアにお辞儀をすると、スクッと立ち上がった。


「では、お嬢様、行ってまいります。」


「ええ、お願いね。」


背の高いメイドはもう一度ウィンディアにお辞儀をすると、屋敷の出入り(ぐち)に向かって駆け出していった。だが、すぐに彼女は立ち止まった。


「あらっ?」


彼女が向かっていた出入り口から、マニエラの姿が見えたのだ。


「ウィン様ぁ~!お嬢様ぁ~!大変でございますぅ~!」


ウィンディアと2人のメイドは互いに顔を見合わせてキョトンとしていた。

【作者より】




【更新履歴】

2025.3.14 Fri. 15:44 再掲

2023.10.12 Mon. 1:47 読み上げアプリ向け修正

2023.9.3 11:01 Sun. 再掲


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