表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/70

突然届いた招待状⑫

ウィンディアが訪れたこの書斎は、フォンテの私室へと続く、言わば私的な書斎である。彼の領主としての公務を行う書斎は、別にある。


ウィンディアは、父親であるフォンテが招待状を抱えて、その贈り物や準備にあれこれと悩むなら、おそらくここにいるだろうと予想してここを訪れたのだが、どうやら正解だったようだ。


ソファーの向こうのデスクに座っているフォンテは、いつもは落ち着いた様子なのだが、すっかり忘れてしまっていた式典のことに取り乱しているのか、その髪はやや乱れ、デスクの上に置かれているらしき招待状と熱心ににらめっこをしていた。


「お父様・・・。」


ウィンディアから声掛(こえが)けされてやっと、フォンテは彼女の訪問に気がついたようだ。彼は、ハタと顔を上げると疲れきった様子で笑顔を作った。


「や、やあ、ウィン。すまないね。庭で宿題をしている最中だったんだろう?」


「ええ。でももうすぐ終わりそうだったから、いいの。それよりもマニエラに聞いたわ。わたしにも招待状が届いたって。」


ウィンディアがそう言うと、フォンテはやや困り顔でため息を吐いた。彼は椅子から立ち上がると、デスクの前に出てきた。


「そこへ座って話そうか。」


フォンテはウィンディアの肩に手をかけて、彼女をソファーの席へと(うなが)した。2人はそのまま隣り合ってソファーに腰を下ろした。フォンテは腰を下ろしながら、デスク脇に控えていたジョセフに、アイコンタクトを送った。


アイコンタクトを受け取ったジョセフは、いそいそと部屋の片隅に()めてあったティーワゴンへと向かい、主人とその令嬢のためにお茶を()れる。


「ね、お父様。わたしもエスカランテ様の成人の儀に、出席しなくてはいけないの?」


マニエラたちと同じように、てっきりウィンディアがワテレアに行きたくないと言うだろうと思っていたフォンテは、その返事に躊躇(ちゅうちょ)した。


「あ、うん、えっと・・・そうだね。成人の儀は大事な式典だからね。(わたし)たち貴族は全員が招待されていると思うよ。」


「全員ってことは、わたし以外の貴族の子供もみんなってこと?」


フォンテは大変言いづらそうだが、何とか口を開いた。


「あ、いや、うん、えっとー・・・。ウィン以外は、半成人(はんせいじん)の10歳以上で、心身健全な貴族の子息令嬢で、希望者だけかな。」


「えっ?」


ウィンディアは驚いた。


「・・・わたしは、6歳なのに・・・それじゃあ、どうして・・・?もしかして王族に近いから?」


フォンテはウィンディアがショックを受けていると勘違いして、非常に慌てた。


「あ、でも、他にもほら、一番(いちばん)(すえ)の王子だって招待されているし。」


「末の王子様って・・・ハーネイ様よね?確かわたしより6つ上の12歳だったと思うけど?とっくに半成人を越えられてるわよね?」


フォンテは(あせ)った。どうにかウィンディアに(こころよ)く出席を了承してもらわねばならない、と。


「あははは。そう、だった・・・かな?あ、うん。そうだったね。ウィンはワテレアには行きたく・・・ないのかな?でもほら、来年からはあちらの学園に進学する予定なんだし?学園の下見ついでに行ってみてはどうかな?」


【作者より】



【更新履歴】

2025.3.14 Fri. 16:06 再掲

2023.10.12 Mon. 4:06 読み上げアプリ向け修正

2023.9.3 11:19 Sun. 再掲

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ