突然届いた招待状⑪
ウィンディアはこうしてはいられないとばかりに、東屋を出て、屋敷の中へと向かった。
マニエラは、他の2人のメイドたちに東屋の後片付けを申し付けると、慌ててウィンディアの後を追った。
ウィンディアが向かった先、それは父であるフォンテの書斎だった。フォンテは日中、屋敷にいる時は趣味に勤しんでいる時以外は、もっぱらそこにいることが多かったからだ。
きっと王家から招待状が届いたとなれば、書斎で執事のエイドリアンとジョセフに、あれやこれやと相談をしているに違いない。エイドリアンとジョセフは、高位貴族の執事を勤める一族の家系の出なのだ。
王家以外には薄い親族しかいないフォンテにとって、こういった相談事には非常に頼りになる存在だった。
トントン。
ウィンディアがフォンテの書斎のドアをノックすると、
「はい、どなたですかな?」
扉を開けてエイドリアンが顔を出した。
相変わらずエイドリアンの真っ白い髪は、ポマードで丁寧に撫でつけられていて、その臭いがたいそう苦手なウィンディアは、一瞬顔をしかめはしたものの、そんなことは今はどうでもいいと、彼の顔を食って掛かるかのように、キッ!と見つめた。
「おや、これはこれは。メイドの誰かかと思いましたら、お嬢様でございましたか。ふむ・・・。と、すれば、マニエラからお聞きになられたのですな?」
エイドリアンの問いかけにウィンディアはコクンと頷いた。その背後の長い廊下の向こうから、マニエラがいそいそとこちらへ向かってやって来る姿が、エイドリアンの目に入った。
途端にエイドリアンはため息を溢す。
「やれやれ。マニエラも相変わらず落ち着きがありませんな。それにお嬢様をお連れするようにと、旦那様から申し付けられたはずなのに、そのお嬢様が先にお一人でいらっしゃられるとは・・・。」
エイドリアンは、やれやれと首を何度も左右に振っていたが、すぐに押さえていたドアを大きく開き、ウィンディアを室内へと迎え入れた。
「さ、お嬢様。どうぞ。旦那様がお待ちでございます。」
【作者より】
【更新履歴】
2025.3.14 Fri. 16:05 再掲
2023.10.12 Mon. 3:50 読み上げアプリ向け修正
2023.9.3 11:16 Sun. 再掲