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突然届いた招待状⑩

ウィンディアは非常に驚いて、思わずその場で立ち上がった。その振動で、テーブルの上に置いていたペンが、コロコロと転がって地面へと落ちた。


(そば)に控えていたメイドの一人がそれに気づき、慌てて駆け寄ってそれを拾い上げた。拾い上げざまに、ウィンディアに向かってペンを返そうと、彼女の顔を見上げるが、ウィンディアは視線を(ちゅう)()めたまま、微動だにしなかった。


ウィンディアにとって、マニエラの言葉は、それほど衝撃的な言葉だった。なぜなら彼女は、まだ幼く、そういった貴族の社交の場へ公式に招待されることは一度たりともなかったのである。あってもせいぜい、父親が親しくつきあっている他家(たけ)の貴族から『当家のディナーに娘さんもご一緒にいかがですか?』とか、『避暑にとても過ごしやすい当家の別荘に娘さんも連れていらっしゃってみませんか?』などと私的な招待がくるに(とど)まっていた。


加えて、娘を溺愛(できあい)するあまり、非常に過保護になってしまったフォンテは、こういった招待が遠方の貴族から届いても、万が一事故にでも()ったら大変だ、万が一強盗にでも襲われたりしたら大変だと言って、ウィンディアを遠方へと(ともな)うようなことはせず、単身で出掛けるだけだった。


これが高位貴族から低位貴族への招待であれば、否応なくそうせざるを得ない状況ではあったのだが、最上位貴族であるフォンテには、娘同伴を断ることに(なん)の遠慮もいらなかったのである。


結果としてウィンディアはフォンテが治める自領(じりょう)を出たことがないままに成長してしまった。


それがこの(たび)は王家から届いてしまった。それはいくら最上位貴族のフォンテでも断りようがなかった。なにせ主君でもあり、自分を育ててくれた王と王妃からの招待状なのだから。


「わたし、もしかしたらワテレアに行けるの?」


ウィンディアは視線を変えぬまま、ポツリとそう(つぶや)いた。その声を聞き逃さなかったマニエラは激しく同意する。


「そうでございます、そうでございますよ、お嬢様!お嬢様は旦那様とご一緒に、王城のあるワテレアに行かなければならなくなってしまったのですよ!」


マニエラや他の2人のメイドたちは、きっとウィンディアが、どうしよう?と動揺した反応を示すだろうと予想したのだが、実際はその逆だった。


ウィンディアはそれまで留めていた視線を、マニエラたちへ向けた。それも非常にワクワク嬉しそうに。


「まあ、素敵!わたし、一度ワテレアに行ってみたいと思っていたの!」


【作者より】




【更新履歴】

2025.3.14 Fri. 16:03 再掲

2023.10.12 Mon. 3:43 読み上げアプリ向け修正

2023.9.3 11:14 Sun. 再掲

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