突然届いた招待状⑦
「いいじゃない。忘れていたって。こうして招待状が来たんだから。」
ウィンディアはテーブルに座ったまま、う~んと伸びをした。
「いいえ!よくありません!」
マニエラはふくよかな腰に両手を当てながらプンプンして見せた。
「どうして?」
ウィンディアは首を傾げた。
「さきほどお嬢様もおっしゃいましたでしょ?旦那様は国王様と王妃様の、まるで息子のようにお育ちなさったって。」
「ええ。従兄弟とは言え、お二人はお父様よりはだいぶ年上でいらっしゃるんでしょ?それでお父様を育ててくださったって聞いたわ。」
「左様でございます。そうでございますから、王妃様と王妃様の息子であられる第3王子様は、旦那様とは言わばご兄弟のようなもの!それをお忘れになるなんて・・・。」
マニエラは白いメイドエプロンを目元に手繰り寄せると、ヨヨ、と泣き真似をして見せた。いや、本当に泣いている。それを見たウィンディアはギョッとした。ついさっきまで怒っていたと思ったのに、と。
側に立っていたメイド二人も、一応上司という立場になるマニエラの、彼女の尋常ならざる様子に戸惑った表情を見せている。
「マニエラ・・・。なにも泣かなくても・・・。お父様がちょっぴり忘れていただけじゃない?そんなに大したことじゃないでしょ?」
「いいえ!大したことじゃないなんて、とんでもございません!」
マニエラの勢いにウィンディアは腰が一瞬だけ引けた。
「いいですか?お嬢様。旦那様は上の王子様がたの成人の儀はきちんと覚えていらっしゃったんでございますよ?いいえ、成人の儀だけじゃございません。その他の式典だってすべて覚えていらっしゃったんです!」
「ええ。知っているわ。よくお誕生日や何かと言っては贈り物を手配されていたのを知っているもの。」
「そうでございましょう?なんでございましたら、その下の王子様たちの式典だって覚えておいででした。いつの年のいつの月が、なんの式典だって。・・・それでございましたのに、どういったわけか、第3王子様の成人の儀のことだけすっかり忘れてしまわれていたんです。」
ウィンディアはマニエラの剣幕にうんざりしながら、ため息を吐いた。
「それは・・・お父様は今年お忙しかったから・・・。」
【作者より】
【更新履歴】
2025.3.14 Fri. 15:58 再掲
2023.10.12 Mon. 3:11 読み上げアプリ向け修正
2023.9.3 11:10 Sun. 再掲