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6 タイムリミット ユタカ
何をやっているんだ? 俺は……。
聞かなかったことにしたのは俺自身なのに、彼女を引き止めてどうするんだ?
「……っ」
引き止めて、引き止めて…―――
俺は、イツミに何を言おうとした?
コントロール出来ていない、自分の感情を持て余す……。
「……イツミ」
俺は、慌てて頭を振り、今考えた全てを振り払った。
忘れよう、もうずっと前から、決めていたことなのだから……。
これ以上、イツミの感情の中に残ってはいけない。例え自分の、タイムリミットが近くなっていて、不安に思考が奪われていたとしても。残りすぎてはいけない。
「……っ」
それが、彼女のためなんだ。
イツミの、……ためなんだ。