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10 エピローグ 運命の選択 イズル


 ボクは、はんぶんの運命が、消えていくしゅんかんを、だまって見つめていた。



「……」



 自分ではえらべなかった未来、それをイツミと言う一人の少女に、たくしてしまった。


 これでボクの運命がはんぶんきえて、シルディオの運命もほぼきまった。


 もう、引き返すことはできない。



 そして…―――



「……イズルにぃちゃ?」



 となりのシートにすわったシノブが、きょとんとした顔で、まわりを見ていた。


 あそんでいたつみ木を、そのまま手にもっている。



「……」



 ボクは、これで、シノブの運命の人をうばってしまうことになる。



「しのぶ、ゴメンね、あそんでたのにこんな所につれてきて」


「……ここ、どこ?」



 たくさんいる人がめずらしいのか、大きな目をみひらいて、シノブは機内をキョロキョロと見まわしていた。



「ひこうきの中だよ」


「ひこーき?」


「あとで見せてあげる、しのぶ、これから兄ちゃんといっしょに、ライル博士の所にあそびに行こう」


「……はかせ?」


「そう、ボクらは、今ひこうきにのっていて、アメリカに行くんだよ?」


「にぃちゃ、ぴょんってできるのに?」


「……そうだね、でも、たまにはひこうきにのるのも楽しいだろ? ほら、しのぶ、今くもの上にいるんだよ?」



 ボクは、まどの外をさして、シノブを見た。



「……わぁ、しゅごい! イズルにぃちゃ、しゅごい!!」



 はしゃぐシノブのあたまをボクはやさしくなでた。



「アメリカについたら、ライル博士にハンバーガー食べさせてもらおう?」


「はんばーがー?」


「パンのあいだにハンバーグとかチーズとかいっぱいはさんでるヤツだよ? きっとおいしいよ」


「うん、にぃちゃとはんばーがたべる!」



 あとは……。



「……シノブ、ゲームをしようか?」


「げーむ?」


「ひこうきをおりて、ライル博士に会うまで、ボクがイツミって言う女の子で、シノブがイズル、ボクのフリをするんだよ?」


「ボクがにぃちゃ?」


「そう、でボクがイツミって言う女の子、できる?」


「うん! にぃちゃ、できる!!」


「……うん」



 パスポートの写真は、チェックの時にすりかえよう。


 むじゃきに笑うシノブ、その向こうに、ボクがたった今うばってしまった、みらいがチラつく。



「……」



 ボクは、ほんとうに、どうしようもないきもちでシノブをだきしめた。



「……ゴメンね、しのぶ」



 ボクは、お前のだいじなものを、うばってしまうせんたくをしてしまった。


 あんな、みらいのために……。



「……ぅ? にぃちゃ? ぐるしぃ……」



 イヤイヤしてボクのうでから出ようとするシノブのほっぺたに、じぶんのほっぺたをくっつけた。



「……」



 シノブ、ごめん……。



「こんな力、なければよかった……」



 ふるえてつぶやく、ボクのあたまを、い~こ、い~こ、とこんどは、しんぱいしたシノブが、なでてくれる。



「ありがとう……」



 むねのおくが、ちぎれそうにいたくなった。



「みらいなんて、見えなければよかったのに……」



 ボクは、泣きそうなきもちで、空につぶやいた。



「……っ」



 でもボクは、せんたくしてしまった。


 あんな、みらいのために……。



 あんな…―――



 息がくるしくて、めまいがする。


 ダレかに、たすけてと言うことばさえ、もう、こおりついてしまった。



「……」



 イツミはユタカを、プロジオ第2エリアの大学病院に運んだようだった。


 みらいは、かくていしてしまった。


 ボクは、大きくいきをついて、たった今、かくていされた未来をかくにんするために、ソッ、と目をとじた。











 fin




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― 新着の感想 ―
∀・)このシリーズが好きですね。大好きかもしれない。本作は精神世界って感じのメタが濃い感触がありましたが、それでもそれぞれのキャラクターが複雑な糸を絡ませては必死に生きている感じなんかあったりして。読…
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