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1 プロローグ あの、夏の午後 ユタカ
何度となく、繰り返し見た情景が今、目の前にあった。
「―――…っ!?」
ついに、この瞬間が来てしまった。
うだるような猛夏の午後一番の熱気の中、陽炎に揺らぐ景色が、一気に鮮明な色に変わった。
跳ね上がる自分の心臓が『そうだ』と、告げる。
これが、ずっとこがれていた、長く恐れていた瞬間…―――
狂おしいほど愛しく、苦しさがあふれて止まらない。
「―――…っ」
初めてなのに、懐かしく、この胸を焦がす。
けれど
この出会いは俺にとって、終わりの始まり
もう時間がないのだと言う事を、嫌でも自覚する瞬間だった。