夕暮れにたたずむ木陰で
情景が思い浮かんだので簡単に文章にしてみました。
表現とかはいまいちだと思いますが、詩的な感覚で読んで頂ければ幸いです。
小説 夕暮れにたたずむ木陰で
その日も夕暮れにたたずむ木陰に私は居た。
「はぁ。今日も何も出来なかったなぁ。今度こそはと思っていたのに・・・。」
今度こそ。そう思いつつ結局今日も出来なかった。いつもここを通るあの人にただ自分の気持ちを伝えるだけなのに。
「あれだけ、頑張ろうって決めたのに結局ここに来ると怯んじゃうのよね。これじゃあ堂々巡りだわ。」
あの人はどう思うのだろう?いきなり言われて困るんじゃないか?いや、困るのは当然として、私の望まない答えが返ってくるのではないのか?
そう、それが怖くて私は中々言えずにいるのだ。やらなければ進展はないのにそれでも恐怖が勝ってしまいいまだに言えずに居るのだった。
「どうしよう・・・このままじゃ、何も言えずに終わっちゃう。でも、今のままじゃ言えそうにないし・・・。はぁ・・・。」
私は木陰で呟いていた。今日で何日目だろうか。そう、ふと、ここで休んでいたときに散歩をしているあの人を見かけてから。
初めはどうとも思わなかった。でも、だんだんなぜか興味を持ってしまった。そう、なぜだろう?
ふと、そう考える。でも、答えは見つからない。それもそのはずである。なぜなら、好きと言う事が理由であり、その好きに対してあれこれ理由をつけるほうがおかしいからだ。
そう、私はあの人を好きになっていた。ふと気づいたあの日から。それから毎日のようにここに居座ってあの人が通るのを見ていた。
そのうち、傍に通るとき話し掛けれるようになった。しかし、自分の気持ちを伝えることは出来なかった。
「どうするのがいいのかな・・・。今のままでは、終わりの無い迷宮に迷い込んだ様なものよね。今のままじゃ素直に言うなんて出来そうしないし・・・。」
そう、私は独り言を言っていた。日は更に傾き、あたりには夜の帳が広がり始める。そろそろ帰らなくては、また怒られちゃうな。そう思って私はその場から立ち上がった。
そして、何時もあの人が通る道を眺める。何時も通りの、何時もの道。別に変わりは無い筈なのに夜の帳が広がり始めた今見ると何か切なくなる。
もう時間が無いのに私は何を手間取ってるのだろう。後悔したくない筈なのに・・・。
今日は気分が悪い。天気もやや良くないのに更に体調まで悪い。「女の子の日」なんて無ければいいのに・・・。
こう言うときは考え自体までが悪いほうに考えてしまう。今日はやめようかな・・・。そう思いつつ、何時もの木陰のところに来た。
「ふう。やっぱりここは気持ちがいいわ。」
そう言いながら私は樹に腰をかける。周囲を眺めながら私は一息ついていた。
「ご気分が悪いようですね。」
え?誰?私は声の方に振り向いた。え?!あの人だ。
「あ、はい。その、「女の子の日」で・・・辛くて一休みをしています。」
わたしはそう言ってしまった。ああ、こんな事正直に言わなくてもいいのに・・・。しかし、あの人は微笑みつつ私に言ってくれた。
「私には体験出来ないので分からないことですが妹が言うには無理をせずお腹を冷やさない様にすると少しは楽になるそうですよ。」
そう言って、私にタオルケットを手渡してくれた。
「最近は冷え込みが厳しいですからね。たまたま自分用に持参していたものですが使ってください。」
私はそれを受け取りつつ、
「あ、わざわざ有難う御座います。とても辛かったので助かります。」
と、そう答えた。それを見つつ、あの人は隣に座ってきた。
と、隣に・・・あの人が居る。体調が悪いのが嘘のように緊張して心臓は鼓動が高鳴ってきた。
「今日はやや天気が悪いですがいい夕暮れですね。」
あの人はそう言ってきた。私は眺めてみる。雲は多いがその雲が暁に染まり夕日が雲の間から柔らかい陽光を注いでいる。
そう、まるで天が福音を伝えるかのように。
「美しい。」
ふと、わたしはそう言っていた。そう、それは美しかった。神が創り出した壮大な芸術作品を見て感動していたのだ。
「そうですね。こう言う時には自然の雄大さが良く分かります。私たちは如何にちっぽけな存在か。でも、何かせずには居られない。人とは不思議な生き物ですね。」
あの人はそう言っていた。私は頷きつつ答えて言った。
「そうですね。私もしたいと思うことがあるのですが中々勇気が出せずに出来ずに居るんです。今日はこんな体調だし・・・。」
そう言いながら、口篭ってしまった。そんな私を見つつあの人が言った。
「それが「普通」ですよ。皆同じ事で悩み苦しんでいるものです。でも、得られる答えは意外と近いのも「普通」なんですよ。」
そう言いつつ、あの人は私に微笑んでくれた。答えが近い・・・。
「あ・・・あのっ!」
「はい?」
「私、あなたにお伝えしたい事が・・・。」
夕方に降り注ぐ陽光が私に当たっていた。私は「勇気」を出してあの人に思いを伝えようとしていた。
その樹は今もたたずんでいる。そこでどんな物語が語られたかはその樹とそこに関わった者が知るのみなのかも知れない。
夕暮れにたたずむ木陰で、そこは静かに休み場を提供していた。
ちょっとした恋物語風に描いてみました。今後もこう言う風な短編が描ければと思っています。