無住職寺
山奥の森の中に寺がある。
10数年程前から周辺の集落は次々と廃集落となって集落に住んでいた檀家も居なくなった。
檀家が居なくなると共に寺の住職も居なくなった無住職寺。
寺の本堂も残っている墓も荒れ果てている。
そんな寺の本堂にお盆の初日、無住職寺と同じ宗派の寺から派遣された僧侶が現れ、大間の真ん中に持って来たラジヲを置きチューナーを回し目当ての番組を流す放送局に合わせた。
僧侶はスイッチが入ったままのラジヲを置いて帰って行く。
夜、ラジヲからお経が流れ出た。
先程まで人気が全く無かった真っ暗な本堂の中に多数の人の気配があり、ラジヲから流れるお経に合わせてお経を唱える声がそこかしこから聞こえて来る。
お盆の最終日、初日に来た僧侶が現れラジヲのスイッチを切り、暫くの間大間の真ん中で読経を行ってからラジヲを持って帰っていった。