06-08
(……考えろといったって。)
ナナは苦手ながらも,絞るように頭からひねり出す。ヨイとの仲直りの方法に、王子たちとの近づき方、はおまけとして。
ミユに相談するのも手だけども、あの時体を張ってくれたミユにこれ以上迷惑かけるわけにもいかない。それに王子たちとの事だって気にならないわけじゃない。あれはあれでいい感じに育つ可能性は高いわけで、あわよくば粉をかけとくのも悪くは―。
と、ナナは頭を振る
(そうじゃない。今やるべきことはヨイとの仲直り!)
ひと月で終わる留学生たちとは違い、ヨイはこれからも長い付き合いになるだろう。このままじゃ授業だって苦しくなるし、お互いに良くない事だ。
それに、物語の主人公は自分である、とはよく言われることだ。ならば、主人公であるはずの自分を差し置いて、まるでこの出来の悪いラブコメのような物語がおかしな事件と退屈な毎日を提供するのであれば。
(確かに私は考えるのが苦手よ!……でも、主人公は私なの。私の人生は、私の物語なの!だから、行動する。それは、何かとつけて逃げてばかりいるアイツよりかはマシ。行動力ならほかの誰にも負けやしないのだから!)
腹をくくったナナの行動は早かった。ヨイに謝罪。計画は何もない。ただ、正面切って謝るのみ、と、授業の後に消えるヨイの姿をナナは追う。ヨイは王子たちと何とか接触しようとしていたが、魔術科女子の厚い壁に阻まれうまく行ってないようであった。
「ええと、ヨイ。あの時はゴメン。」
ナナは思い切って後ろから一言かけるも、まったくの無反応。ヨイは意に介した様子もなく、王子たちを見つめていた。
(あれ?聞こえなかったのかな?)
そう思ったナナは少し声のボリュームを少し上げてみる。
「ヨイ、ごめんなさ」
「うっさいわよ!」
発言を中断する、聞く耳も持とうとしない即座の拒絶にむかっときたが、ここは我慢である。冷静になれなければあの時の二の舞だ。
「あの……ごめ…」
「いいから、消えて。」
取りつく島もない、このシチュ。
(なんかどこかで同じシーンがあったような?)
ナナはデジャブを感じた。何かに似ている。
(……私だ。)
それは、数か月前のナナ。謝罪をしようとしてきたウィードを拒絶していたナナ。あの時のウィードと、今のナナは同じ立場だ。ウィードの気持ちが分かる、という薬。レドはここまで薬の効果を予想していたのだろうか。
ナナは、ふぉっふぉっふぉと笑う、罠にかけてきた時のレドの顔を思い出した。あの憎たらしくも快楽に歪んだ無様な顔には知性などはみられなかった。(注・レド「そんな笑い方したことないわよ!」)
(……なわけないか。)
即座に否定し、それはないと結論付ける。
しかし。もし、今のヨイが昔のナナなら、説得は不可能だろう。ナナは頭を抱える。そういう状況であれば、冷静になってとか、モンスターに襲われたと思って忘れろ、とか言っても逆効果。だからといって、行動しなければ何も変わらない。
(ええい、まずは行動よ!)
「いいから謝らせて。一言でもいいから。」
「……うるさいっていってんでしょうが。こっちは忙しいの。そんなに謝罪したいのなら他をあたってくれる?」
「あのねぇ。他に謝罪してどうするのよ!」
カチンときてナナは深呼吸をする。
「私たちは仲間でしょ?数週間しかいない彼らより、私たちの話が大切じゃないの?」
「あなたのウザったらしい顔は年中見るけど、王子さまはね、この瞬間しか会えないの。だからこの大切な時間を邪魔しないで。」
「なにぉ?黙って聞いていれば!ウザいって何!?」
嗚呼、どうしてこうなったのか。謝罪をするはずだったのに、いつの間にやらガルルルル、と獣が牙をむくかようにいがみ合う二人である。
しかし、この一触即発にもなりかねないこの現状を打破したのが、とある男であった。
「……喧嘩なら他の所でやってもらいたいのだが?」
ウィードでもない、全く聞き覚えのないその声に。彼の姿をみたナナは思わず声をあげた。
「あ、外れ男!」




