06-07
「おかしいじゃない!」
勇者学園の留学生たちが来てから一週間、特に何事もなくナナは普通の学園生活を謳歌していた。
何か思わせぶりにイベントみたいに起こしておいて、留学生とは一切関りはなくヨイとの関係もまだ修復はしていない。これでは詐欺である。ナナの心の声は叫びとなり、ついには声となって表に出てしまっていた。
「何がだ?」
教材を片付け終わり教室を出ようとしていたウィードがその言葉に反応する。
「変化よ!変化!普通、こういうイベントがあったら、何か期待するじゃない。」
「イベント?よくわからないが、良い事じゃないか。平穏こそ、国の宝だ。」
「よく言うわよ。あなたが来てから変なことばかりじゃない。」
思い返してみても、まったくフラグを立てるのは変態ばかりと、ナナは小声で文句を言う。
「何か言ったか?」
「なにも。」
まじまじとナナはウィードの目を覗いてみた。何を考えているかわからないその瞳。
「もしかして、なにか嫌がらせをしてるわけじゃないでしょうね?」
「……なぜそのような発想に至る。」
「だって、ねぇ。」
ナナはクラスの誰かしらに同意を求めたが、興味がないのか全く見向きもしない。
「せっかく王子たちが来てるのに何もないってのは……。」
「それは、そのような行動を起こしてないからだわ。」
ひょっこりと、突然小さい頭が出てきて返答した。ミルだ。
「パパのせいにしないでね。あなたが行動しないから悪いのよ。」
そういって、ずうずうしくもウィードの右手に纏わりついく。
「あのねぇ。私だって何とかしようと頑張ってるのよ。」
出会いを作ろうとミユと一緒に街に遊びに言ったり、はたまた、仲直りしようと朝早く起きたりモイに頼んだり。努力はしている。ただ、タイミングがつかめないだけ。そもそも、だ。
「……大体、なんであなたがここにいるのよ。」
ナナはちびっこを睨みつける。
「あなたは、留学生でもなんでもないでしょう?用事がないなら出てって頂戴?」
「私はね、あなたと違って行動的で優秀なの。パパの授業時間はすべて把握済みよ。」
「はいはい、あなたは非常に行動力があるようですね!」
しかし、接触する機会すらないのは流石におかしい。少なくとも同じ学園にはいるのだからすれ違いのチャンスはいくらでもあるはずである。
「そういえば、嫌がらせといったな。心当たりがないわけではない。」
「やっぱりあなたが!」
「そうじゃない。ウエトリア先生が随分と苦心していたぞ。なんでも、いかに君たちと接触させないかと、熟考を重ねたとか。」
「ウエトリア先生が?一体、なぜ……。」
変態ウィードが嫌がらせをする事はあっても、生徒指導のウエトリア先生がするなんて思えない。むしろナナ達こそが先生に嫌がらせをしている可能性の方が高いだろう。ナナは悩んだ。
「そのような行動を起こしてきたからではないか?」
それは、世間の評判。知ってか知らずか、男食いの事実をそれとなく突き付けられる。
「君たちがそのような行動をとっていれば、未然にトラブルを避けようとするのは、当然のことだろう。」
「私、何にもやってないわよ!?」
何かやってれば今頃は彼氏持ちである。こうして苦労をせずに済むわけで、ナナの不満も当然だ。
「君が何もやっていないのならば、戦士科全体がそう判断なされたのだろう。」
「はぁ?私は関係ないわよ?」
「それが組織というものだ。」
ウィードの口が重い。まことしやかに説得しているつもりだろうが。
「はいはい。連帯責任ってわけですか。いまどき古すぎるわ。」
(やっぱり、こいつとは相性が悪いのかもしれない。)
つくづく意見の合わない奴である。大体、王子だってスピーチでは平等なんて言っていたがあんなのは建前。実際はこんなもので、現実は無礼講といいながら不公平。そもそも、行動しろと言われても八方塞がりなわけで。
「じゃ、結局どうすれば良かったのよ。」
「それはだな……。」
しばしの沈黙の後。
「あなたが考えることよ。」
「君が考えることだ。」
ウィードとミル、二人の声が重なった。




