06-06
(あれが留学生?)
何やらインテリぽいのに、年齢不詳の不思議ちゃん、やたら豪華でド派手なものに、場違いな明らかにごっついの。そしてその中には先ほど会ったミルとかいう小娘と学者風の男の子は見当たらなかった。
(あの子たちは、留学生じゃなかったんだ。)
ウエトリア先生の挨拶もそこそこに、彼らの内の一人が壇上に上がった。彼の胸には何やら立派な勲章みたいなものが、ナナにはそれが何を示しているかは分からなかったけれども、それが大層な称号や身分を表していることだけはわかった。
「ふむ。9,8,9,7ってとこか。」
モイが何やら囁いた。
「ん、何が?」
「点数よ。あなたはどう思う?」
「どう思う、って……。」
「あ、左からね。」
有無を言わず会話を投げてきたので、仕方なく勇者学園の生徒に点数をつけてみる。インテリ眼鏡は暗く見えるし、性別年齢不詳の見た目は子供は対象外。壇上の男は気品はあるけれどもなにか偉そうでもあるし、デカブツに至っては着こなしのセンスが見られない。
「んー、7,6,7,7、かな。」
皆が皆、そんな騒々しいやり取りを始めたものだから。
「お静かに!」
さすがにウエトリア先生の一喝が飛んだ。そして、喧騒が収まったところで彼の口が開く。
「では、勇者学園を代表して私から手短に挨拶をさせてもらう。私の名は、ベルナルド・バルダール。」
ざわざわと生徒たちがバルダールという言葉に反応する。通貨の由来となったこの名前が意味すること、それは。
「そうだな、セントラルでは王子とも呼ばれているが。」
「王子!?」
その言葉で気付かなかった者も含めて全員が色めき立った。
「お静かに!」
もう一度、声が飛ぶ。
本の挿絵や肖像画では見たことがあるが、ナナにとっても実物を見るのは初めてだった。思わず背伸びをしてその姿をまじまじと眺める。見た目は今時の男の子という感じはするのだが、王子といわれると不思議なもので、王子の様にも見えてくる。
「そうだ。だが王子といっても、ここでは君たちと同じ学生だ。なので、気軽にベルと呼んでほしい。」
王子がそういうと、生徒たちは一層の盛り上がりを見せたのであった。
その熱気は朝礼が終わっても続いており、普段はすぐに解散する生徒たちもその場に残って何やらと感想を言い合っていた。
(ベル。ウィードの想い人もベル。もしかして?)
ナナもまた空想を膨らませる。もし、王族と関連してるのならウィードもセントラルの皇子様と関係があってもおかしくない。ましてや恋仲なら―。
(いかんいかん。おかしな発想をするもんじゃないぞ、ナナ!)
やっぱり考えるのは苦手だなと悩むナナをどう思ったか、モイが尋ねてきた。
「やっぱり先生の方が良かったのか?」
「……なんでそうなるのよ。」
ナナは不満を態度で示した。
「だってさ、7点って、客観的に見ても点数低くない?」
「そんなことないわ、あなただって7点を付けたじゃない。ほら、あの大男。」
決して線が細くスマートとは言い難いが、さわやかイケメンに見えなくもない、ナイスガイ。
「ああ、アレ?アレは外れ男だからいいの。」
「外れ男?」
尋ねると、モイは頷いた。
「男グループの中には一人くらい冴えない男が混じってるものよ。あれは外れ枠の、外れ男。だからいいの。」
そんなモイの言い分に。
「呆れた。あなたこそ、ノンデリじゃない。」
「別に?聞かれてないからいいんです!」
拗ねたようにそう言って立ち去ろうとしたので、ナナは慌ててモイの背中を捕まえる。
「ちょっと待って、モイ。お願いがあるんだけど、代わりにヨイに謝ってくれないかな?」
「私が?それはあなたが謝るべきことじゃないの?」
モイはおどけたような表情を見せた。
「そうなんだけど、それが出来たら苦労しないわ。だから話をする時間だけでも作ってもらいたいのよ。お願い!」
「んー、わかった。ナナが謝りたがってる、とだけ言っておく。それでいいね?」
「それでいいわ!ありがとう!」
感謝の言葉に、去り際のモイは片手を挙げて返した。持つべきものは友達の友達である。
(これで何か進展があればいいんだけど)
ナナはそう願ったのであったのだが。




