06-05
「……忘れてたわ。」
そう呟き、ナナは頭を抱えた。
ウィードとあの「パパと呼ぶ娘」の関係を、再び考えてみる。実はウィードは王なのかもしれない。月を見守るあの影星のように、金星学園を守るためこっそり派遣されたウィード王。(……ってのは流石にありえないか。)
あるいは、隠し子のパターン。王室に養女を出した、とか?でも、養女を王女にする理由がない。(それって乗っ取られるってことでしょ?あり得ないわ。)
ここは正直に、血がつながってないというのを信じてみるとする。あの娘の婚約者とは、恐らく早朝見かけたあの男の子。貴族というのは小さい内から婚約候補者を親密にさせておくとか聞いたことがあるから、もっともこれが正解のような気がする。(でも、そうなると彼女とパパとのつながりが分からないわね。)
(やっぱり、徹底的に絞ってやらないといけないわね。)
そう考えている矢先にナナはヨイとすれ違った。それが冒頭である。
「や、やあ、ヨイ。前は、その、ゴメン。」
話さなければ何も始まらない、と勇気を出して声をかけてみるものの。
「フン!」
ヨイは視線すら合わせることなく、すたすたと素通りして朝礼台の方に向かっていってしまった。まずは、ファーストコンタクト失敗である。
朝礼の並び順はこれといった決まりはないが、背の高い生徒は後方で見るという暗黙のルールがある。そうすることで、指示はされずとも、台を中心に自然と綺麗な半円状の列ができる。ナナの前方には背の低いヨイが、中ほどにはニニやムギの姿が、そしてナナの右手側には魔術科が固まって陣取っており、その中にはミユの姿が確認できた。
(さて、どうしたものかねぇ)
ヨイについて、ナナが考えあぐねていると。
「よっ、ナナ!」
記憶のどこかで聞いたことがあるような声がした。振り向くと、そこには見覚えのある顔。ヨイのいつもの友人の一人で、その生徒の名前は確か。
「えー、ホイ?おはよう!」
「……モイよ。」
「あ、ごめん!」
同じく背が高いモイは、間違えられたことも特に気にすることもなく、ナナの隣に立つ。
「ちっ、二択を外したか。」
ナナがつい舌打ちをしてしまったのを、モイは聞き逃さなかった。
「ちょ、二択って何さ?」
慌ててナナは言い訳をした。
「ええと、別に覚えてないわけじゃないの。ほら、名前が紛らわしいというか。」
「それを覚えてないって言うの。」
「ごめん。」
「そーいうノンデリなところ、良くないと思う。ヨイも、そうやって傷つけたんじゃない?」
本当の理由は違うんだけど、と口にしようとしたが、かえってややこしくなりそうなので黙っておくことにした。それにヨイもこの話はあまり広げたくないだろう。
「……気付いてた?」
「そりゃ気づくわよ。あんたさ、ヨイになんかした?」
「ごめん。でもさ、私を嫌ってるのはいつものことじゃない?」
「まあ、いつものヨイとはいえるか。」
そんなナナの言い訳に納得したのか、リラックスしたモイは背伸びをした。と、周りが急に静まり返る。誰かの声が聞こえた。
「しっ、先生が来た!」
ちょうど校舎から先生たちが出てくるの見えたのでナナ達も会話を中断する。いつもはここで静かになる所だが、今日は違った。勇者学園の象徴である白いブレザーを着た面々も続いたからだ。




