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06-04

「はぁ?」


 さすがのナナでも、この少女の言動がおかしすぎるのはよくわかった。


 (婚約者ぁ!?王女?そもそも、パパとは?ウィードが王女様のパパなら、ウィードは国王ってことでしょ?そんなのありえないし、属性を盛るにもほどがあるわ!)


 この虚言にどこから突っ込んでいいやらと、あきれるばかりである。


「だいたいね、パパってなんなのよ。ウィードは独身じゃないの?それとも、あなたは隠し子なの?おかしいじゃない。」

「あーあ、不感症の貴女にはわからないでしょう。でもね、私とパパとの間にはね、血のつながりなんて超えた、愛の歴史があるのよ!」

「愛の歴史ぃ?」


 (出た。愛。トモもそうだけど、愛ってそんな軽々しく使っていい、簡単なものじゃないと思うんだけど。)


「馬鹿らしい、何が愛よ。だいたいね、血のつながりを超えたっていうけど、それってつながってないってことじゃない?」

「それが何か?」

「大抵血のつながってないパパといったら、いかがわしい間柄を指す言葉だわ。何が不感症よ、人の事言えるの?汚らわしい。」


 少女は笑った。


「はあ、貴女ったら。いやらしい想像しかできないのね。あなたにはわからないでしょうけど、私とパパの間には、家族を超えた、家族より親密な関係があるってことなの!」

「ふぅん、親密ね。」


 ナナも対抗して鼻で笑う。


「それが誠実な意味だったらなおさらよ。家族のように過ごしてきたというのなら、婚約者なんて絶対になりえないわ。娘のような存在は、ただの娘。恋愛対象にはなれないの!」


 その言葉が効きすぎたのか、少女は俯いてしまった。


「……やめる。」

「ん?」

「パパ、やめる。ウィードは、私の婚約者だもん。パパ、じゃないもん。」


 先ほどまでの威勢は何処へやら。少女はすっかり意気消沈し小刻みにプルプルと震えている。


「はあ。愛の歴史はどうしたんですか?あなたたちの絆ってそんなものだったの?」


 煽ってはみたものの少女は今にも泣き出しそうだ。所詮年端のいかない小娘だ。本気でやり合ったってしょうがない。


(やれやれ、だわ)


 これは一旦矛先を変えるしかないようである。


「で、ウィード、どういうことなの……って。」


 しかし、この事実に最も衝撃を受けていたのはウィードであった。ミルなんとかという小娘以上に彼は動揺していた。


「い、いや。私にもさっぱり。そもそも君には許嫁がいるだろう?」

「……エリオの事?私にもついて来れないようなあんなのろまなんか、論外ね。」


 と、気を持ち直したのか、彼女は威勢を取り戻し胸部をバン、と叩く。


「私の結婚相手はね、いずれ国王になる男なの。だから、この国に統治するに相応しい叡智と武勇を兼ね備えている人じゃないといけないの。それはパパしかありえないわ!」


 と、彼の手に腕を絡ませようとしたのだろう、腕を伸ばしたが、ウィードがすぅ、と立ち上がったのでそれには成らずにミルはよろけた。


「ちょっと!逃げる気?」

「……悪いが、時間だ。君こそ、急がないといけないのでは?」

「はぁ?まだ時間はあるわよ。」


 ナナはちらりと時計を確認した。まだ授業まで十分にある。どう見ても逃げるようにしか見えない、が。


「今日は臨時の朝礼がある。留学生を紹介するためにな。最も、君は聞いてなかったか。」

「はいはい、悪かったわね。」


 再びサボりを責められ、ナナは不貞腐れながらも彼に続いて渋々席を立つ。


「今回はここで引き下がるわ。でも、問題は終わってない事を忘れないでよね。聞きたいことは山ほどあるんだから!」

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