05-10
「ウィード!?どうしてここに!?」
「はて。呼んだのは君ではないのか?」
驚くナナに対して、ウィードは不思議そうにナナを見つめた。
「べ、別に。何も言ってないわよ。」
慌てて取り繕ってみるものの、動揺は隠せない。言葉が震える。
「そうか。では、さっきの発言は一体?」
「だから、何でもないって!」
さすがに本人を目の前にしては言えないし、それに薬の影響もあって何をしでかすか分からない。ナナは感情的にはならないよう、深呼吸した。
「そうだな、何か悩みががあったら私に言うといい。それが教師としての務めだ。」
そんなナナを知ってか知らずか、ウィードはそれが義務かといわんばかりに、淡々と答える。
(なぁにが教師よ!それならそれらしく行動しなさいよ!)
全ての元凶が、まるで他人ごとみたいに諭してくる。再び腹が立ってきたナナは、たまらず叫んだ。
「悩み?悩みってあんたの事なのよ!」
「私の事か?」
ウィードはすっとぼけたように返す。
(まったく、それしかないじゃない!)
「そうよ!だいたいあなたが変な格好で私に無理にキスを……」
「変な格好とは?」
何のことかとばかりに、ウィードはまたとぼける。
「だから、その変な、ダサいコートの事よ!」
だが、ナナが指し示した先にコートは見当たらなかった。といっても全裸ではない(そうとなれば本物の変態である)、代わりにグレーのスーツを身につけていた。
ウィードのスーツ姿は初めて見るが、高身長とがっしりとした体格のお陰ですごくよく似合っている。
「コートがどうかしたのか?」
「……あれ?」
狼狽えるナナ。
(ヤヴァい!何も考えられない!)
言葉が目的を失い、思考が定まらなくなる。薬のせいかもしれない。
「だから、へんな、かっこでキスを…」
「キスがどうかしたのか?」
キス。それが何を表しているのかさえ分からなくなってくる。
(キス?……したい?)
「キスをもう一度……」
「わかった。では、目を閉じて……」
言われるがまま、ナナは目を閉じた。そして……。




