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05-08

「どういうこと?」

「聞こえなかったかい?なら、もう一度。」


 今度はナナの耳元で囁いた。


「僕と付き合わないか?」

「……ひょっとして良くない薬でも飲んだの?」

「薬?なんのこと?」


 トモは何にも知らない感じで目をぱちくりさせる。レドに同じく薬のようなものを飲まされたのではとも思ったが、とぼけてるようでもなさそうだ。


「あ~、わかった。ほら、いつもの冗談でしょ?。」

「冗談じゃないさ。本気だよ。どうしたら信じてもらえるかな。」


 トモは考える素振りを見せる。


「そうだな。君の為なら、女の子になってもいい。」

「あんたは最初から女でしょうが!」


 全くおかしなことを言うものである。ナナがたまらず突っ込みを入れると、トモはしゃがんでナナを見上げた。


「ナナ。わたしは嫌い?」


 どきっとした。


 初めて聞いた、トモの女の子の声。上目遣いのトモに、ついよからぬ感情を抱きそうになったのを薬のせいだと否定する。そもそも、だ。


「トモが女の子になるのなら、わたしが男の子になるってことじゃない!意味が分からないわよ!」

「じゃ、君のダーリンでもいいさ。」


 トモは髪をかき上げ、今度は男の声で呟いた。


「僕じゃ不満かい?」


 ウィードに負けじ劣らずのバリトンボイス。この一声に不意を突かれたら、深淵に落ちてしまう女子も多いだろう。だが残念なことに、それはナナにとってはいつもと変わらない気取った女たらしのトモでしかなかった。


「あんたねぇ。男になったり女になったり、それじゃいくら何でも節操がなさすぎるわ。」


 裏表で変わるパーカーでもあるまいし、簡単に男と女が入れ替わるわけもない。この恋愛リバーシブル女は、そんなこともお構いなく見境のない提案をしてくる。


「そんなことはないさ。これは、愛なんだ。」

「愛?」

「そう、愛。愛さえあれば、人は何者にでもなれるんだよ?」


 そう大げさに言ってトモはナナの肩を抱く。ぐっと距離が近くなる二人。


「君の為なら、男だろうが女だろうが、何にでもなってあげる。そして、君が劣情を催したのなら、いつでも唇を貸してあげる。」

「何が劣情よ!」


 しかし。ふと思うこと。


(この状況をうまく使えば、薬の呪いを解く事ができるかもしれない。例えばトモを相手にマナを発散させれば、とか。でも……)


「ごめん、そんな気持ちなんて微塵もないから。」


 そういってナナはトモの手を払った。


 相手を利用するなんて気分のいいもんじゃない。それに本当かどうかもわからないけど、愛、とまで言われたのだから、こちらも誠意をもって答えなければないと、ナナは感じていた。


「そうか、残念。」


 そう伝えると、拍子抜けするほど軽くナナを解放した。

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