表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/85

05-07

 ふと過去を思い出し、ウィードは腕を見る。


 あの頃の傷はもう残っていないが、その罪の痛みは今でも感じることができた。罪を背負っていても前を向いて進んでいかなければ生きていけないことは、彼女達から散々教わったことだ。 


 木を削り魔法をかけてもらって完成した剣は、剣というにはあまりにも不格好だ。それも、何か生ものを感じさせる気がする。しかし、調整に調整を重ねた苦心の作ともいえなくもない。


(まるで今の私だな。)


 ウィードは苦笑した。

 

 着任当初は多少のごたごたはあったものの、こんな私でも受け入れてくれた生徒たちは今、情熱にあふれている。ならば、やるべきことは一つ。


(私もその思いに答えなければならない。)


 そう意気揚々と扉を開けたが、教室には空席が目立つ。逃亡か、予期せぬ大けがか。はたまた、不満を持った生徒たちのボイコットなのか。ウィードは不安に駆られた。


(まさか、受け入れられてはいなかった?)


「ずいぶんと人がいないようだが……何があったのか?」


 ムギに尋ねると、申し訳なさそうに答えた。


「いいえ。えーっとですね、ただのずる休みだと思います。」

「そうか、ただの、ずるか。」


(なるほど、これも、平和ならではということか。)


 懸念は消え安堵はしたものの、サボられたという事実は変わっていない。ウィードは少し焦りを感じていた。




 一方のナナはというと。


「共存条件、か。」


 いつものように屋上で黄昏ていたナナは、そうつぶやいて唇の縁を指先で撫でた。


 キスってのは、それなりの意味がある行為。でも、ウィードにとってあのキスは単なる血の代わりだったわけで。だけど、血を食事にするのは吸血鬼であって、人じゃない。人じゃないのなら今すぐ退治しなければいけないけれど、ミユたちはモンスターではないという。なら、せめて首輪をつけたほうがいいと思うけど、レドは、それは違う、という。

 

 考えるだけ考えても分からない。


(大体、人って何?誰が決めたの?人の形をしているから?外見上の違いってこと?)


「サボりとは感心しないね。」

「なんだ、トモか。」


 一瞬、先生に叱られるかとも思ったが、ナナは声の主にほっとした。


「人ってね、授業より大切なものがあるのよ。第一、あなただってここにいるってことはサボりじゃない。」

「違いない。」


 笑って、トモはナナの隣に腰掛けた。


「聞いたよ、ナナ。ヨイを泣かせたんだって?」

「……。」

「答えたくなかったら答えなくていいよ。事情は分かってる。」


 トモはこう見えても人心掌握に長けていて、ナナはいつもからかわれてるし女生徒にもモテている。だから、こうしてやってきたのは、どこからか事情を察して手助けに来たのかもしれない。


 そう感じたのは間違いだった。


「ヨイは魅力的だ。小柄でかわいらしくてまるで小動物みたいだ、でも、それでいて強くて。キスしたくなるのもわかる。」

「ん?」

「僕なら頬ずりして舐めまわしたいくらいだよ。」

「ちょっと!何の話よ。」

「愛の話さ。キスしたくなっても、相手次第。相手が受け入れる気持ちがなければ、幾ら愛を募らせても、僕たちは遠くで見守るしかないんだ。」

「そんなことわかってるわよ!」


 分かってるから、ウィードに怒っているのだ。そもそも相手の意思を確認しないといけないのにあいつは。とそこまで考えて思い出す。


(ひょっとして、あの唾液をくれ、が相手の気持ちを汲んだセリフだった?いやいやいや、ありえないでしょ!)


 そんな悩んでいるナナを見て、トモは優しく声を掛けた。


「ナナ。僕とだったら、駄目かい?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ