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過去 ウィードとベル

 屋敷の地下にある懲罰室。


 ウィードは上半身裸になって、椅子に座らせられていた。対面に居るワスワラの手には鞭が握られている。


「ここに呼び出された理由は分かっているな?」

「はい。」


 ウィードは唾を飲み込んだ。


 理由とはお嬢様の事だ。部屋に閉じこもって三日が経つが、彼女は一向に出てくる気配がない。お嬢様が目にしてしまった、あれを排除できなかった責任。


「わかっているなら話は早い。」


 まず一つ目の鞭が振るわれる。右肩に赤い筋が走ったが、ウィードは耐える。


「これも決まりだからな。恨むなよ?」


 そして二つ目は反対側に。左腕に二つ目の傷が浮かび上がる。


「これで最後だ」

「うっ。」


 三つ目の鞭は丁度一つ目で裂けた皮膚に当たり、ウィードはたまらずうめき声を上げた。声が壁に反射しあたりに響く。


「ウィード。私が嫌いか?」

「……いえ。」

「嘘、だな。君はあまり私を好いてないように見えたのだが。」

「好きでもありませんが、嫌いでもありません。」

「なるほどな。君らしい答えだ。」


 ワスワラは笑った。


「では、この処遇に異論はないな?」

「はい。」

「一日、1回だ。」


 ワスワラは鞭を掲げて見せた。


 一日とは、お嬢様が部屋にこもっている日数だろう。その日数につき1回の鞭の量刑。お嬢様を守り切れなかったのだ。終身刑になってもおかしくはない、それほどの罪の重さを、ウィードは痛みと共に噛みしめる。


「それと、ウィード君。この後は医務室に行くんだ。薬の手配は済んである。」

 

 しかし、ウィードは動こうともしない。椅子にもたれかかって項垂れたままだ。


「どうした?罰は終わったぞ?それとも傷が痛むのか?」

「……それでは罰の意味がありません。」


 声を絞り出すようにウィードは答えた。


「罰か?そうだな……では失礼して。『甘ったれるな!』」


 軽く咳ばらいをしたのち、ワスワラはウィードを一喝した。さすが元冒険者というところだろうか、まだ若いウィードは一瞬にして気圧される。


「その怪我で戻るつもりか?罰を受けるのはお前の仕事だ。しかしお嬢様を守るのもまたお前の仕事ではないのか?」

「……その通りです。」

「もしお前に許しがたいものがあるのならば、すでにお前の任は解かれている。そこにいるということは、まだ期待されているということだ。それを忘れるな。」

「すみません。」

「私は期待されているといったんだ。謝ることはないだろう?」

「すみません。」


 そういわれてもなお、ウィードは謝罪するしかできなかった。体を丸め、頭を下げ、何度も謝罪するのであった。

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