04-13
研究所を出るころには日も暮れ、代わりに新しく顔を出した月明かりがナナを照らす。数刻ぶりの新鮮な空気に触れて、窮屈な空間から解放されたナナは深呼吸をした。
「はあ。なんも進展なかったかぁ。」
一日無駄にしてしまったような気がして、つい、ぼそりと呟いてしまう。
「そんな言い方ってないと思う。」
「あ、ミユ。」
それを、後から追いかけてきたミユに咎められた。
「ちょっとした会話も、立派な成果よ。人は出会いを積み重ねて、知識を深めて成長していくものなの。……どうしたの?」
ナナがポカーンと口を開けていることにミユは気づいて尋ねた。
「ミユってさ、たまに、だけど。年寄り臭い話するよね。]
「それってどういう意味?」
傷ついたのか、問い詰めるミユにナナは笑う。
「ごめんごめん、年寄りって意味じゃないの。考え方が達観してるっていうか。ミユってひょっとして、お爺ちゃんっ子だったりする?」
「何よそれ。」
「あ、それとも、お婆ちゃんのほう?」
「どちらでもないわよ。」
「でもさ、ミユって一人っ子って言ってなかった?」
「私、そんなこと言ってた?」
「中級の時さ、あんまり覚えてないけど、そんな気がする。」
ナナは、ミユと家族について教え合ったことはない。きっと、自己紹介か何かで小耳にはさんだのだろう。そんなおぼろげな記憶をたどってみる。
「そうね。そう。私は、一人っ子、よ。」
ミユはなぜか自分に言い聞かすように呟く。
「そんなことより、はい、これ。」
「え?何?」
ミユから手渡されたのは、紙袋。安そうな材質ではあるが、赤いチェック柄のリボンで括られており、最低限ではあるが贈り物の体は成していた。
「ジジとレドからよ。そして、二人のメッセージ。今日という日を忘れないように、って。」
「へぇ。なんだろ?」
振ってみると、かさかさと小物が掠れるような音がする。
「さぁ。中身は聞いてないけど。」
「開けてからのお楽しみ、ってことね。ありがと!」
寮に戻ったナナは早速、紙袋を開封してみた。
中には2つの箱が入っていた。大きな箱と小さな箱、まずは小さい方の箱を開けてみる。中から出てきたのは、狼をかたどった小さなブローチ。
「これは、ジジのプレゼントかな?」
目の部分が青く彩られており、あの獣人の目に似ている、気がする。夜店などで見つけたのだろうか。
(今日という日を忘れないでね、か。)
ナナは、もう一つの大きな箱を開けてみた。出てきたのは太いペンであったが、何の変哲もないわけもなく、その形は男性特有の何かによく似ていて。
「レドぉおおお!」
ナナは顔を真っ赤にしてそのプレゼントを投げ捨て、それを贈ったであろう人物の名を咆哮したのであった。




