04-10
話が一段落すると、ナナは立ち上がった。
「あなたたちの話は分かったわ。ありがとう。」
そう言ったものの、実のところナナには良くわかっていなかった。ウィードが人であるかとかマナがどうとか、半分は聞き流していたのでさっぱりである。しかし、これ以上頭が痛くなる話題が続くということに比べれば、そんなのは些細な問題であった。
(とにかく『追い出し計画に協力してもらえない事』。これが分かりさえすれば、それで充分だわ。)
そう考えて、そそくさと退出しようとするナナに対して。
「待って!」
ジジが慌ててナナの服の袖を押さえたので、ナナは転びそうになった。
「何するのよ!」
慌てて堪えると、ナナはジジを睨んだ。
「……話は終わってないわ。」
「終ってない?」
「……ミユから聞いてない?」
ナナがミユに視線を合わせると、今度はミユは言った。
「言ったわよ。知ってもらいたい事がある、って。」
「さっきの話じゃないの?」
「……違うわ。彼の事、よ。」
「彼?」
彼、といえば通常は男性を指す。しかしここは女子校、男はいないはずである。
(もしかしたら教職員?それとも魔法のお偉いさんの話とか?)
ナナが疑問に思っていると、丁度タイミングを見計らったかのように教室の扉が開かれた。現れたその人影に思わずナナは悲鳴を上げた。
「ギャ―!!!」
その男は、狼の銀髪の亜人。
年齢は同い年か、それよりもうちょっと上に見える。銀髪というより薄っすら汚れが目立っているような灰色で、亜人の特徴である狼の耳を生やしていた。筋肉隆々で逞しい体は、観賞用の肉体美というよりも機能的で無駄のない筋肉を示していて。それよりも、特筆すべきは、そう。
何も……身に着けてないのであった。一切、である。いくら屈強なナナであっても叫び声をあげるのも当然と言える。
そして、男はナナを見るなり、その状態で飛び掛かって来たのであった。
「@p+§∇ξ!?」
声にならない声をあげるナナ。そして。
「いけない!ジン、伏せ!お座り!」
ミユやジジではない、女の慌てた声が聞こえる。
(ジンというのは亜人の名前?でも、そうだとしたら!)
「ちょっと待って!?今覆いかぶさってるこんな状態で伏せなんてやったら!」
いま男はナナの上に乗っかってる状態。ということは、つまり…。想定される惨事を予想してナナは大声を上げたが、残念ながら抗議は遅かった。
ピトッ。
男が命令に従ったことによって、案の定、何とも名状しがたい異様な何かがおなかのあたりに張り付いたのであった。




