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04-09

 驚いているナナを一瞥し、ジジは淡々と話す。


「……珍しい事じゃない。スライム、ゴーレム、そして様々なアンデット。モンスターと定義している者の中には生命を持たぬ者も多い。」

「えっ?スライムも生きてはいないの?」

「……どうして臓器も持たないただの液体の塊が生き物に見えるの?」

「うむむ。」


 つまり、モンスターというものは生き物ではない物も含まれる、らしい。ただの布きれや液体の塊が生きてはいないように、吸血鬼も生きてはいないのだろう。


(じゃあウィードは?)


「ちょっと待って。ウィードって死体なの!?」

「……そこだけど。」


 と、またもやジジはチョークを取り出して板書した。


『命題2 ウィード先生は吸血鬼か?』


「どういうこと?あいつは吸血鬼じゃないの?」

「……結論から言うと、彼は吸血鬼ではない。」

「はぁ?どういうこと?」

「……吸血鬼の定義から外れている。……彼は生きている。」

「でもビーチェ先生は吸血鬼だっていってんだけど。」

「……そうなの?」


 それを聞いたジジは少し驚いたのか、普段のトーンとは違った声を出した。そして少し考えこむ素振りを見せる。


「……おそらくそれは魔力欠乏症からの観点。……あれは普通の人間に起こらない症状だから。」

「え?でも魔術師だって、魔力が欠乏したら失神とかしない?」


 魔力が0になると失神するというのは冒険者なら常識だし、そう教わったはず。ナナは当然、疑問に持った。


「……話がそれたわ。それはあくまでもビーチェ先生の見解。私たちは彼を死者ではないとみている。例えるならば、生きている吸血鬼、……いえ、死んではいない吸血鬼、アン・アンデットというべきか。」

「アン……アン?」


 その言い回しにナナは困惑した。


 研究者というものはどうしてわざわざ回りくどく、そして小難しくいうのだろうか。もっと簡潔にすれば教科書も簡単になって学びやすくなるのに、とナナは思う。


「まったく。生きているも死んでいないも同じ事じゃない。」

「……同じ事ではないわ。発言には気を付けてるだけ。私は研究者だから。」

「ふーん、まあいいわ。続けて。」


 しかし、こんな事で相手と揉めるわけにはいかないので、その言葉をナナは受け流す。どう違うのかは気にはなったが、ここにはあくまでも見解を聞きにきただけだ。


「……彼は死んではいない。だから、私たちが定義する吸血鬼とは違う。」


 その断定した言葉にナナは引っかかるものがあった。


「おかしいわ。それ。」

「……どの点が?」

「どうして、その、死んでいないってわかるのよ。動いてるだけじゃ生き物と判断できないのなら 違いがわからないはずだわ。」

「……そうね。でも、それは貴方も気づいてるはず。貴方は彼が死体かもしれないといった時に驚いた。なぜ?」


(なぜ?)


「う~ん?」


 ナナは人差し指をおでこにあてて考えてみた。あの吸血鬼らしくないドジっぷり。そして間抜けで変態的な行動は、魔法回路で動いていると言われてもそのようには感じられなかった。


「ほら、あいつってあほだから?何か吸血鬼らしくないのよね。」

「……」

「……」


 求めてられていた答えが違ったのだろうか、三人の間に微妙な空気が流れた。


「……それは、ある意味、正解かもしれない。……彼の行動には吸血行動以外の意志が感じられる。魔術の強制を上回る、何かしらの強い意思が。」

「それって何が何でも女子校に勤めたいという意志だったり?」

「……上回るのならば、その可能性もある。」


(やっぱり、ね。)


 色々と難しく言われたが、当初の予測通り、中途半端な吸血鬼、あの直観が正しいのだろう。

 そして、意志とやらも、どうせあの男の事だ、大した理由ではないのだろうとナナは推測するのであった。


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