04-08
「何をいまさら。モンスターでしょ。」
吸血鬼といえば教科書にも載るくらいのメジャーなモンスター、さすがのナナでも間違えるわけがない。
「そう。モンスター。だけど、質問。モンスターって一体何?」
「何って……。」
(そんなの、考えたことない。)
戦士として剣を振ってきたのは、モンスターが討伐対象であり、賞金になってるからであって、その事を疑ったこともなかった。
「モンスターといわれてるから……?」
こんな答えでいいのだろうか、とナナは不安になる。
「……そう。今のあなたなら、まだ答えはそれでいい。」
「え?」
「……モンスターは怪物。ヒトの言うことを聞かず、害となす存在。それはモンスターの絶対的条件。」
「私たちがそれを分析して害になる存在と判断した場合に、モンスターと定義するの。だから間違ってはいないわ。」
(なにか難しく言っているけど、害をナスモノをモンスターと呼ぶ、ということは。つまり。)
「やっぱりあいつはモンスターじゃないの!」
興奮してナナが思わず立ち上がると、その勢いでイスが倒れて大きな音を立てた。
「……それは貴方の見解では?」
「なっ!?」
馬鹿にされたような気がして、ナナは思わず奇声を発した。
「……貴方が聞きたいのは私たちの見解だと思ったけど。……違うの?」
「はいはい、そーでしたそーでした。どーぞ、続けてください。」
ナナは不貞腐れたように返事すると、転がったイスを足で直し再び座る。
「……では次の質問。……吸血鬼って一体何?どういうもの?」
「……。」
(また、変な質問。)
先ほどと同じく言葉に詰まる。考えたことがなかった、ごく当たり前の、いわゆる常識といわれている知識を、ナナは限り振り絞って答えた。
「えっと、不老長寿で、人間の血を吸って生きる。ニンニクと十字架が苦手。あ、あと陽の光とか。」
「……そう。でも、それは誰がどうやって調べたの?」
「えっ?」
『そんなの分かるわけないじゃない!』と、感情的に答えたくなるのを必死でこらえて、なんとか思いつく限りに奥底から言葉を紡ぐ。
「でも、そう言われてるじゃない。本とか、お話とかでさ。」
「それじゃ足りないのよ。」
「……調べるには、数が必要。伝承を集めて、その中から共通項を抽出して定義する。」
「でも、吸血鬼は目撃例も少ない。だから、吸血鬼のデータは不足しているというのが本音よ。」
「……それに、嘘も誇張も混ざってる。」
言ってることはなんとなくわかる。それはナナ自身も体験してきたことだ。
「そうね。ニンニクも平気だったみたいだし。個体じゃ、違うのかも。」
ナナが思い出したようにいうと、ジジは首を振った。
「……そもそも好きとか嫌いとかそういうものはあり得ない。……なぜなら、あれは死体だから。」
「死体!?」
「……そう。ただ魔術回路で動いてるだけの死体。……それが吸血鬼。」




