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04-06

「今から行くのは、ここから奥。」

「……なんだけど、その前に、これにサインして。」


 といって、ジジが差し出したのは何かの紙切れ。


「何これ……契約書?」


 それはカラフルでポップな字体で書かれていて、学生たちがわいわいと集まって書いたような手作り感満載の契約書であった。


「……そう。秘密、たくさんあるから、守ってほしい事、たくさんある。……文字、読める?」

「あのねぇ。そこまで馬鹿じゃないわよ!」


 かちんと来てナナはジジから紙切れをひったくると、そこに羅列されていたのは字体に似合わないような難解な言葉たち。


 (う、む、難しい。これは専門用語?かな?)


 今更読んでとも言えず、そこらへんは読み飛ばして何とか要約してみる。


(この契約は、なんたらかんたら、うんぬん、あ、ここは読める。秘密厳守。破ったら……記憶消去のこと!?)


「記憶消去って、これ大丈夫なの?頭が悪くなったりしない?」


 ただでさえ賢くない頭である。これ以上悪くするわけにはいかなかった。


「大丈夫よ。その部分の記憶がばっさり無くなるだけ。なんも支障はないわ。」

「大丈夫?信じていいの?……なら安心なのかな。」

「……でも、それは術式がうまくいった場合。」


 ほっとするナナの横でジジが恐ろしい事をつぶやいた。


「うまく言った場合って!失敗もするの!?」

「……大丈夫。うまくいけば問題ない。」


 相変わらずマイペースにジジは答える。その様子からは自信があるのかないのかさえ分からない。


(だから、その、うまくいかない場合が問題なのよ!)


 そう叫びたくなるのを心の中でぐっと堪えて、ナナは恐る恐る質問する。


「……どれくらいの難易度なの?その魔法って。」

「……10回に1回は失敗するかも。」

「……10回に1回……」


 ナナは絶句した。


「大丈夫よ。秘密を守ればいいだけ。わたしはナナを信じてるから。」

「そう言われてもなぁ。」


 しかし、記憶を消すってのは、ハイハイと二つ返事で簡単に同意できるものではない。


(う~ん、悩む。)


 踏ん切りがつかず書き渋ってると、ジジがさらにとんでもないことを付け加えた。


「……同意しなくても、何かあったら強制的に魔法をかけるから。」

「は!?」

「……その場合、協力してくれない分、失敗する確率も上がる……かも。」

「……どれくらい?」

「……5回に1回ぐらい?」

「……ミユぅ。」


 ナナが目で訴えるとミユは困ったように苦笑した。何の考えもなしにここまでついてきたことを若干後悔しながら、契約書にしぶしぶサインをする。


「ほら、秘密を守ればいいだけだから、ね。」


 ミユの励ましにも、一握の不安は残る。


「ねぇミユもあの契約書にサインしたの?」

「うん。みんなで書いたよ。」

「それなら少し安心だわ。」


 安心の材料が増えたわけではない。何も状況は変わってないのだが、自分だけではないと安堵した。何事も集団でやれば恐怖は薄れるものだ。それに、あのミユがサインするくらいだから、それなりの根拠があるのだろう。


「……これでいい。」


 ジジはサインを受け取ると、改めて階段を下りていく。。


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