04-02
イライラの原因は、完全なる制裁を与えてないから。
あれらの不埒なモンスターは、自らのと引き換えに報いを受けた。しかしウィードは言葉でしか謝罪をしていない。だから、イライラしていたのだ。罪はその身をもって贖罪すべきである。それがナナの出した結論だった。
「ちぇすとぉ!」
「!」
ナナの渾身の一撃は、ウィードの額を掠めて宙を切った。さすが変態でも教師である、一筋縄ではいかないようだ。そして、突然始まった戦闘にわらわらと集まってくる見物客たち。
「いったい何事……ってまたお前か!」
代表してホイが注意するも。
「うるさい!モンスターなんかと仲良く勉強するつもりはないわ!」
「モンスター?どこに?」
「そうよ、あいつ!モンスター!」
ウィードを指差すナナに、クラスの皆は顔を見合わせゲラゲラと笑いだす。
「ナナ、お前さっきからおかしいぞ。」
「それは元からじゃない?」
好き勝手に言い出すホイたち。
(くぅぅ、こいつらもぶんなぐってやりたい!……けど、それは今じゃない。)
まずはウィードを制裁してからだ。で、その当の本人はというと。
「そうか、モンスター、か。」
表情を変えることもなくつぶやいていた。それがなんだか寂しそうに見え、ナナもほんの少しほど罪悪感に包まれる。
(な、なによ。まるで私が悪いみたいじゃない!)
人の姿をしているが、あいつはモンスターなのだ。勢いに負けてはいけない。
「騙されないで!そいつ、吸血鬼なのよ!」
「先生が吸血鬼?でも、この一カ月、被害者っぽいのいないじゃない。」
「被害者は私よ。私!」
「ふ~ん、血を吸われたの?でもまだゾンビじゃないようだけど。」
ヨイはじろじろとナナの首筋を見る。
「私は、キ……何でもないわ。とにかく、あいつはモンスターなのよ!」
ナナは思いとどまった。キスのことまで踏み込むのは憚られたからだ。
「大体、あんなニンニク臭い、あなたの欲望に塗れた弁当を食べる吸血鬼がどこにいるのよ。」
ヨイが大げさに両手を広げて呆れたように言う。
「ほら、先生からも一言言ってよ。」
「……そうだな。ナナ。」
「な、なによぉ。文句ある?」
イケボで突然名前を呼ばれてどぎまぎするナナ。
「奇襲をかけるなら、大声で突撃するのは感心しないな。それでは相手に位置を知らせているようなものだ。」
完全な敗北である。
戦いを挑んだはずの相手に負けるばかりか、先生みたいな的確なアドバイスまでもらって、(というか先生だから正しいかもしれないけれど)戦士としてのプライドが傷ついたナナは、みっともなく、その場に居づらくなり目に涙を溜めながら、走り去る。
「……くそぉ!覚えてろぉ!」
「ちょっと待て!この後の授業はどうするんだ!」
先生の制止も聞かずに、負け犬のように走り出すナナの後ろで。
「あいつなんてほっておいて、先生、私の血を吸って~」
「やめてくれ!私は人だ!決してそんなことはしない!」
例のごとく追いかけっこが始まったのであった。




