03-08
「ふむ、上出来だ。」
「上出来、ってわけでもなさそうだけどね。」
ナナは考えあぐねていた。目の前にあるのは、穴だらけになってしまった衣類の山。魔術構造を破壊するためとはいえ、このまま返すわけにはいかないだろう。
「ああっもうっ!穴が開いた制服とか、どう言い訳して返せば良いわけ?弁償して、とか言われない?」
そんな疑問にムギが答える。
「うーん。依頼人なら、多分、気にしないと思うけど。」
「え?どうして?」
「考えてみて。一度盗まれた制服やパンツをもう一度着ようと思う?」
ムギの代わりにトモが答えると、ナナは深く感心した。
「……確かに。」
どう扱われたかわからない衣類を着用しようと考えるのはニニぐらいなものだろう。
「だから、依頼人の目的は、盗品の奪還というよりは、犯人の検挙だと思うの。」
「犯人?そういえば犯人は?」
先ほどから衣類に気を取られてたナナは、慌てて辺りを見回す。
「犯人というのなら、これだろう。」
「何これ……海パン?」
ウィードが掲げて見せたのは、どこで紛れ込んだのだろうか、どこか見覚えがあるような男児用の海パンだった。聖金星学園に男がいるわけもなく、男物の、ましてや男児用なんて、そんな趣味の生徒がいない限りは、所持してるはずもなく、盗まれようもないのだが。
「これが犯人?」
ナナは怪訝な顔で、海パンを見つめる。
「そうだ。これが魔力を帯び、魔術構造が生成され、似たような構造体を集めていたのだ。」
「先生。悪いけどさっぱりわからないわ。わかりやすく言って。」
「マナを補完するために、似たような魔術構造体を集めてだな……」
「だーかーらー。もっとわかりやすく!」
困惑するウィード先生に、見かねたトモが助け船を出す。
「つまり、服なら服、海パンなら下着、似たもの同士、集まりやすいってことじゃないか?」
「……そういうことだ。」
説明することをあきらめたのか、ウィードの答えは投げやりにも聞こえた。
「もう!真面目に答えてよ!」
だが、その言葉はトモに遮られた。
「ごめん、ナナ。質問はそれくらいにしてくれないかな。ムギも私も限界なんだ。」
「あ!ごめん!」
すっかり忘れていたが、授業中にも眠ってしまえるナナとは違い二人は寝不足気味。これから下山しなければならないし、授業だってもちろんある。
「そうだな。では回収するものは回収して、帰るとしようか。」
「ちょっと待って。これは女性の下着なのよ。私たちが回収するからウィードは触らないで。」
「大丈夫だ。そのようなものに興味はない。わたしの目的はこれだからな。」
「えっ?」
下着には目をくれず落ち着いて海パンをコートの中に入れるウィードであったのだが。
「……」
ウィードに新たな疑惑が生じた瞬間でもあった。




