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03-07

 見つけた。

 

 ムギの言うことは本当だった。聖金星学園の制服がゆらゆらと飛んでいる。それは、まるで導かれているかのように、一直線に、何かに向かっているように見えた。


 やがて開かれた場所にたどり着いた時、その制服は力を失ったかのように、ポトリと落下した。


「光源を飛ばすぞ。」

「えっ?そんなことしたら犯人にバレ…。」


 有無を言わさずウィードは光をさらに上空に移動させると、周囲が照らされ、草が伸びきった平原が浮かび上がる。そこには、探していた様々な衣類が散らばりながら重なっていた。しかし、そこには人影がない。


「犯人がいないじゃない。これ、逃げた後じゃないの?」

「犯人?何を言ってるんだ。これは……。」


 ウィードが説明する前にナナは盗品を取り返そうと衣類に手を伸ばす。


「まだ触るな!」 

「きゃぁああああ!」


 腕を取られたナナが叫ぶ。ウィードの警告と同時に、その衣服たちは襲い掛かってきたのであった。




 たちまち無数の衣類に取り囲まれてしまったナナたちは、正体不明の敵に右往左往する。


「これってなんのモンスター!?」

「見えない敵。ひょっとしてゴースト……とか?」


 ゴースト。現世に恨みの念を残してしまった悪霊、なんて言われてるけど。


「は、は、はっ、やめてよね……。」


 トモやムギの言葉に、ナナは力なく笑う。人体実験なんて話をしたのはナナであるが、あれは冗談だったわけで、現実であってはたまらない。ナナは身を震わせた。


「怖がることはない。あれはただの魔法現象だ。」

「そ、そうよね。」


 ウィードを信じたわけではないが、そうであってほしいという気持ちの方が勝り、ナナは頷く。


「相手はただの布切れだ。殺傷能力は低い。落ち着けば、必ず勝てる。授業を思い出せ。」


 ウィードのアドバイスに、ナナは一呼吸して自身を落ち着かせて剣を目前に構えた。


 (まずは一撃!)


 横に教科書通りの一発を入れたつもりが、ひらりとかわされる。まるで軽い薄布を相手にしてるみたいに。


 (って、布だけどさ。)


「ムギ、どうしよう!コイツ斬撃が効かない!」


 ナナは剣を振るいながらムギに尋ねるが返事がない。慌ててムギの方を向くと。


「ごももももっ!」


 大量のパンツがムギの頭部を覆っていた。ムギは鷲づかみにしてそれを剥ぎ取ろうとしているのだが数が数である。次々に襲ってくるパンツに成す術もなく、時折できた隙間から呼吸をするのが精一杯のようだ。


(いやー!あんな攻撃受けたくない!)


「ウィード!どうすんのこれ!」


 ブンブンと剣を振りながらすがる思いでナナが振り返ると、ウィードは下着を握りしめていた。


「って、どさくさに紛れて何やってんのよ。」

「相手はただの布切れだといっただろう。掌にマナを集めて握りつぶしただけだ。」

「……」


 ナナのジト目にも臆することなく、ウィードは堂々と答えると下着を捨て落ち着いて手を払う。


「本当でしょうね。」

「ああ。どんな方法でもいい。魔術構造を壊せばいずれ動かなくなる。」


 魔術構造の破壊。


 術式への介入は何も魔力によるものだけじゃない。物理的要因によっても魔術構造は変化し、影響を与える。それは例えば、木を割って火をつけたり、符を破って道しるべとするように。魔法は、奇跡やイメージといった漠然とした物じゃない、重力や蒸気圧のような只の力なのだから。


 半信半疑ながらも、物は試しである。ナナは飛んでいたパンツを地面に叩きつけると、足で踏みつぶして固定し剣を突きつけた。パンツはまるで生きのいい魚のようにぴちぴちと動くものの、次第に力を失っていき、動かなくなる。


「やった!」


 効果があると見たほかの二人も同様にナナのやり方をまねてみた。握りつぶすのは無理でも、叩いたり、引きちぎって見たり。あれだけ飛んでいた大量の衣類もみるみる減っていき、代わりに布の山が積み上がっていったのだった。



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