03-3
ミユを誘いに魔術科まで来てみたものの、ミユの姿が見当たらない。
(まさか、休み?もしかしてまた検査とか?)
すこし不安になったナナは、近くにいる生徒に声をかける。
「ミユ探してるんだけど、知らない?」
「ミユ?う~ん、さっきまでいたんだけどね。」
と、女生徒はミユの席を指した。
(よかった、休みじゃなくて。)
ナナは胸をなでおろすと、今度は通りかかった別の生徒が丁寧にも教えてくれた。
「ミユなら慌てて帰ったけど。どうする?明日になるけどなんか伝えとく?」
「ん-、そこまではいらないわ。ありがと。」
手を振って挨拶し、ナナは教室を後にした。
(う~ん、まいったなぁ)
ナナは頭を掻いた。忙しそうなミユに報酬がいいとは言えない仕事を振るわけにもいかない。
(ここはムギと二人で回るしかないのかぁ。そうだ!ニニにも、餌で釣って手伝ってもらお。)
そして、深夜。
「あぁ!もう!どうして真夜中なのよ!」
「クジ運弱くて。ごめん!」
「あー、謝らないでいいから。そんなつもりじゃなかったの。」
見回り時間を決めるくじ引きに負けたムギが謝罪する。
夜中に見回ることになったのは理由がある。先ほどの会議の話、
『報告があるだけで10枚弱。これだけパンツが盗まれてるのに、誰も目撃者がいないのだよ。』
『……つまり、犯人は目撃できない夜に行動してる?』
『そういうことだ。』
というわけだ。
「それにしても夜中かぁ。」
夜中という単語に、ナナにはあの吸血鬼の事が引っ掛かった。脳裏に「言っただろう。約束は大切だ、と。校則違反は没収だ!」と校則違反の下着を排除していくウィードの姿が浮かぶ。
(ううん、まさかね。)
「ねえ、犯人って誰だと思う?」
ムギたちに会話を振ってみる。
「ふつーに、外部から来たんじゃない?内部の犯行とはとてもおもえないんだけど。」
「ふつーに、かぁ。」
(ふつーじゃ、この学校に侵入できないとは思うけどなぁ。)
「私は内部犯だと思うけど、」
「ニニは分かったゾ!」
ナナの言葉を遮って予想外の所から返事が来たので、ナナは少し驚いた。好奇心を持ってニニに聞く。
「へぇ、誰なの?」
「犯人はパンツの買えないびんぼー人ダゾ!」
ナナはずっこけた。
「あのねぇ。たとえ貧乏でも、人が一度履いたパンツなんて履かないわよ。」
「ニニはヘーキだゾ?」
「……」
(まあ、高級パンツって話だし、欲しくなる、のかもしれない。もしも、パンツを失くしたとしたら、他の人でもパンツをはこうとか、そういうこともあるのかも……ってなに言ってんだろ。)
思考をニニに汚染されそうになりながらも、学生寮を中心に学校中を回ってみる。が、一向に何も起こる気配がない。
(まあ、事件は起こらないほうがいいんだけどねぇ。こればかりは犯人が現れてくれないと……ってジレンマが。)
しかし、そういった思いをよそに時間だけが経過して、ついには朝日が昇ってくる。
「もう何も起こらないじゃないの!」
「ナナちゃん。思ったんだけど。」
「ん?」
苛立つナナの脇腹をつつき、ムギがいった。
「私たちが騒がしいと、犯人も出てこれないんじゃないかな。」
「あー!!」
ナナはポンと手を叩くと、肩を落とした。いかにも監視してます、とばかりに騒いでいれば犯人だって出てこれるわけがない。
(こんな当然な事に気付かないなんて!)
これがミユであったら、すぐに気付いたであろう。
「というと、今日は全部無駄骨だったわけぇ!?」
「うん。明日からは静かに探さないとね。」
「明日も見回りかぁ。あーもうっ!報酬、もっと吹っ掛ければよかった!」
ナナは長期戦になりそうな事を嘆いたが、事態が進展するのにそう時間は掛からなかったのである。




