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03-02

「下着泥ぉ!?」


 ナナは驚きの声をあげた。


 女子校ではあるのだが、その手の話は今まで聞いたことなかったからだ。なぜならば。


 まず、学園が四方八方山に囲まれている。交通の便は悪いが、いわば難攻不落の城塞だ。そして、生徒は強者ぞろい。もし外部から易々と学園内に侵入し窃盗を成立させたのなら、それはある意味、設立以来の快挙かもしれない。


 怒りよりも先に、妙な関心が沸いた。


 (ま、そんなのいたら見つけ出し次第ボコボコにするんだけど。)


「そう。協力してくれる?」

「もちろん。」


 ナナはムギとがっちり握手した。下着泥棒は全女性の共通の敵である。協力しないわけがなかった。




 放課後、ムギに連れられて集合場所である会議室に向かうと、そこには学園OBで衛兵でもあるミラルダとゾゾ、そして、クラスメイトのトモが2人を待っていた。


「げっ、トモ!」


 トモ。刈り上げた短髪がさわやかな、イケメン女性。学園でも上位の成績であり身長は高く、その中性的な顔立ちは、どこか美麗の男性を彷彿させる。つまり、女子からも人気が高いのだが。


(かっこいいんだけど、ちょっと苦手なんだよなぁ。)


 苦手の理由は、女の子好きじゃないか、というあの噂。ナナにその手の趣味はない。


「よ、よろしく。」

「よろしく。」


 とりあえず恐る恐る握手を交わす。


「早速だが、ナナ。聞きたいことがある。君のパンツの柄は何色だい?」

「なっ!?」


 余りに不躾な質問にナナは反射的にひっぱたこうとしたが、その手をトモは掴んでナナを抑えこんだ。


 「これは、真面目な話なんだ。」


 真顔でトモが迫ってくる。ウィードが男の変態としたら、女の変態は彼女なのかもしれない。


 (ちょ、こんなところで貞操の危機!?)


 なんて、バカなことを考えていると。


「トモ、それでは言葉が足りないぞ。」


 ミラルダがトモの頭を叩き、間に割って入る。


「すみません。ちょっとからかいたくなったもので。」


 トモはミラルダとナナに謝罪した。

 

「犯人の傾向をつかみたくてな。協力してくれる生徒には下着の柄と盗難の有無を聞いている。」

「あー、つまり、犯人を割り出してるわけね。」

「マ、そういうことダ。」

「理由は分かったけど。」


 納得はした。だが、たとえ同性相手でも、あまり言いたくはない事ではある。ナナはムギに視線を向けた。


「ムギは言ったの?」


 ナナがそうというと、ムギは恥ずかしそうに下を向いて小さく頷いた。


「……いったのね。」


 (ま、調査のためだし、仕方ないわね。)


「ちゃんと校則に則ったパンツよ。それに盗られてもないわ。」

「そうか、やっぱりな。」


 トモとミラルダはお互いに頷きあった。


「ちょ、やっぱりって、どういう意味よ。」

「変な意味ではないぞ。傾向通りだ、ということだ。」


 そんなナナの不平に、ミラルダは答えた。彼女が言うには、犯人には傾向があるらしい。

 

「魔術科を中心に、高価なパンツが狙われているんだ。」

「ギャハハハ、戦士科オレらノパンツは臭ソウだからナ!」


 ゾゾのデリカシーのない一言は戦士科一同を白けさせた。


「兎に角、いろいろあってな、俺たちが解決させることになった。」

 

 会議の結果、深夜に見回りすることなった。給金も出るらしい。また、犯人を捕まえた場合の成功報酬もあるとのことだが。


「依頼主は匿名だが、報酬もある。ま、生徒から依頼でな。あまり期待はしないでほしい。」

「え、これクエスト課からの依頼じゃないの?」


 クエスト課。学校や街の面倒事、主に魔物退治だが、そこで依頼を受けたりしてちょっとしたお小遣い稼ぎをすることができたりする。この場合、学校から報酬が支払われることになるのだが。


「多少黙認されてるとはいえ、校則違反だからね。正式な依頼は出しにくいのだろう。」

「なるほどね。」


 恐らく依頼主は魔術科の生徒なのだろう。そして、依頼料も自腹、ということになる。

 

(それにしても、依頼料も出せるなんて魔術科はリッチね。)


 魔術科は戦士科に比べて貴族が多いと聞いたことがある。とはいっても、大抵の貴族様は中央都市セントラルの学校へ通うわけで、こんな辺鄙な学園に通う貴族は弱小であったり、訳ありなんだろうけど。


 そういえば、ミユもどこかの地方貴族だと聞いたような気がする。


(とりあえず、ミユでも誘ってみるか。)

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