表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/85

02-09

 その後、十数日ぶりにミユが帰ってきた。教室にミユの姿を見つけたナナは、こっそりと近づくと、背後からミユを抱きしめた。


「ね、ミユ、聞いてよ~。」

「わわわっ」


 大げさに驚いたミユに、目、鼻、口…はさすがにないけど、あらゆるところから水を吹き出し、今までの事を報告するナナ。ミユがいない間に何が起こったか話そうとしたが、その前にミユはナナのおでこの辺りを手の甲で軽く叩いた。


「ちょ、ちょっと待って。検査入院してきた私に向かって、第一声がそれ?」

「ごめん。退院おめでとう。」

「遅い。でも、許す。」


 ミユが叩いた所を今度は撫でる。


「でもでも、本当に久々。どうして、そんなに時間かかったの?」

「ちょっとセントラルまで行ってきてね。」

「セントラル!?えー、羨ましい。」


 中央都市(セントラル)とは、ここの東方地域含む周辺国を統べる大国の、中心的な主都市であり大都会だ。


 ここからセントラルまでへ行くには、険しい山道を通らなければいけない。早馬でも2日、魔法を使っても丸1日。通常ならば2回ほど馬宿に泊まらなければいけないところである。魔法技術の最先端を行くセントラルは、最新コーデなどの流行を知るのにはもってこいの場所であるが、ここからは、おいそれと簡単に行けるところではなかった。


「ずっと病院の中にいたんだから、羨ましくないわよ。それ以外も軽く拘束されてたし。」

「拘束!?そんなことやられたの?」

「ええ。軽く、だけどね。」


 と、ミユは袖を捲って、まだうっすらと赤くなってる腕の痣を擦って見せた。


 拘束。不穏な言葉を耳にして、ナナは固まった。

 もしも途中でゾンビ化したとしたら、大変なことになるから、なのだろう。気軽な観光旅行などではなかったことをナナは察した。


「そう。大変だったね。それで、検査の結果はどうだったの?」

「体内にある余剰マナが不活性化してるし、ソルも損傷してないから問題ないって言われたわ。」

「うん、なるほど?」


 流れでナナは調子よくうなずいたが。


「……意味わかって言ってる?」

「ごめん、わからない。」


 疑問を持ったミユに、ナナは舌を出して素直に答えた。


「要するに大丈夫ってことよ。」

「そっか、よかった。」


 検査の結果に安堵したナナは、軽い冗談をいう。


「ま、意外にしぶといミユが簡単に死ぬわけないもんね。」

「何その根拠のない自信。それにしぶといって。」


 ナナより華奢なミユは笑った。


「別に、そう思っただけ。」


 根拠がないわけではない。怪物が現れたときにはすでに逃げていた、その状況判断能力。冒険者にとって最も重要なスキルに、ミユは長けているからだ。だが、ナナはそれを口にするのをためらった。深い理由はない。ただで褒めても何か面白くなかったからだ。


「で、私に言いたかったことがあるんじゃないの?」

「そうそう。それでね。」


 ナナはミユがいない間に何が起こったか、今までの事を全部を話した。


「へー、ニンニク効かなかったんだ。」

「ね、おかしいでしょ。」


 ナナは前に身を乗り出してミユに訴えかけるが、ミユは極めて冷静に返事をした。


「別におかしくないわよ。人間にも苦手な物ぐらいあるよね。例えば、ここら辺では有名な山菜。」

「ああ、アオヨモギね。私は好きだけどね。それが?」

「ね。苦手な人は多いけど、すべての人間がアオヨモギが苦手ってわけじゃないでしょ?」

「そっか。ニンニクが苦手な吸血鬼は多いけど、全部の吸血鬼がニンニクが苦手ってワケじゃない。つまり、好みってことね。」

「そういうこと。」


 しかし、ナナはまだ納得のいかない様子であった。


「う~ん?そんな単純な理由かな?なんか納得できないわ。」

「じゃ、他に何が考えられるのよ。」

「そうねぇ。」


 ナナは男のことを考えていた。あの情けない男の事だ。何もかも中途半端に違いない。


「あ、わかった!あいつがなぜニンニクが平気なのか。変態だからよ。」

「ええっ!?それこそ答えになってないじゃない!」


 何の理由にもなってない発想にミユは驚きの声をあげたが、ナナにはナナなりの根拠があった。


(そう、あいつは変態だから。変態だから、吸血鬼としても中途半端だし、人間としても中途半端なんだわ!)


 ミユの困惑をよそに、ナナはそれが一番最適な答えだと、結論付けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ