02-06
吸血鬼の代表的な弱点といえば、聖水、十字型のお守り、そして、ニンニク。『ペペロンチーノ大作戦』、それは得意のスタミナ料理で「おもてなし」する、ナナのささやかな復讐であった。
授業が終わり寮に戻ったナナは、さっそく食材を確認する。
(魔力切れの冷蔵庫は空っぽだけど、乾燥食材はそろってたはず……うん、これならいける!)
大体の目星をつけると、ナナは戸棚から様々な食材と材料を取り出した。
まず、引き出しからファイヤ・スティックを二本取り出す。これを折ると、折れた木片が魔法的に発火する。他に引火しない、安心安全の魔法の炎だ。
その火で、水を張った鍋とフライパンをそれぞれ温める。鍋にはパスタ、フライパンには食用オイルを垂らして薄く伸ばしなじませる。茹で上がったパスタを刻んだニンニクと唐辛子で炒めて、そして、隠し味としてジャワの実を少々。いつもと違うのは、愛情の代わりに、愛憎をたっぷり込めたニンニクを多めに振りかけること。
ナナは料理が得意だ。なにせ、幼いころから宿の仕事を手伝っていたのもあって、10になる頃にはすでに料理を任されていたほどである。
「ナナもさ、年頃になって好きな相手ができたら料理を作ってあげなさい。パスタ料理は手軽だし安いし、男なんてイチコロよ?」
そうママが言ってくれたことを思い出すと、ちょっぴりホームシックになり目の端から水滴がこぼれそうになる。でも、今は涙ぐんでる時じゃない。せっかくの料理が塩分過多になってしまう。今作るべきは、あの憎むべき男をノックダウンさせる、このイチコロ料理なのだ。
丹念にパスタを炒めているとフライパンから香ばしい匂いが漂ってくる。そして。
「いい匂いなのダ~。」
その香りに誘われてどこからともなく、ふらふらとよだれを垂らしたニニがやってきた。
(この子、いつも物欲しそうにしてるわね……そうだ!)
「あ、ニニ。いいところに来たわ。これ食べてみる?」
そういうと、ニニは嬉しそうに目を輝かせた。
「いいノか!?」
「いいのいいの。」
自分で味見しようと思っていたが、夜中に余計なカロリーを摂取したくない気持ちもある。そんなところに都合よく腹ペコさんの登場である。ナナは手持ちのフォークでパスタをからめとると、それをニニの口元へ運ぶ。
「ん~!おいチぃゾ!」
そう言って、頬を緩ませるニニのその表情を見て、ナナは安堵した。
(良かった。ブランクが心配だったけど、腕は落ちてないみたいね。)
「これ、全部食べていいカ?」
ナナが頷くと、ニニはあっという間に平らげた。完全大勝利である。
(これでよし。明日にでもこの弁当を差し入れしよう。)
あの変態男に不本意な苦しみを与えれるかと思うと、ワクワクが止まらない。が、しかし。
(ん~、でもちょっと物足りないわね。)
さすがにパスタだけでは物寂しいものがある。他にも何か付け足したい。
(よし、本番では他にも買い揃えよう。もっとニンニクが効くようなおかずを添えてね。)
そう計画を練ったナナは改めて決意した。
(さあ、贖罪してもらうわよ。この、私の食材でね!)




