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02-01

 うららかな春。


 新生活はモテコーデで運命の彼氏をGET!なんて、女性誌のような見通しの甘い計画が上手く行く訳もなく。男狩り(マン・ハント)に失敗したナナは授業を聞く気力も抜けて机に突っ伏していた。


(はぁ。せっかく理想の男に出会えたと思ったのに。)


 ミユは魔術の影響がないかどうか念のための検査で遅れてくるようで、ナナは一人窓の外を眺め溜息をついた。




「―魔術が蒸気の常識を超えたのは、ここ最近のことです。」


 年季の入ったベテラン魔術教師のウエトリア先生の言葉もナナには届かず、上の空。


(鳥っていいよね。悩みもなさそうで。授業もないし、恋の歌を歌えば生きていけるし。)


「使用に限界がある科学より、魔法。魔法技術革命は、既存の技術を凌駕し—ナナさん?」


 そんなナナの様子に気づいたウエトリア先生が問いかけた。


「ナナさん?寝てるのですか?」


 もう一度確認を取るが、返事はない。先生は黙ってチョークを手に取るとナナの方へ投げつけた。狙いは違わず、ナナのおでこへとまっすぐと飛んでいく。さすが学園が誇る教師陣というべきで、魔術師らしからぬ投擲を見せる。


 だが、ナナはこれでもクラス上位に位置する戦士である。その気配を察して飛び起きると間一髪、躱す。


「先生!なにするんですか!」

「何するんですか、じゃないですよ!私の授業で寝ないでください。」

「先生。私、戦士になるんです。魔術の使えない私が学んでどうなるんですか?」


 役に立たない学問は学ばないに限る。人の頭の容量は限られているから—というのがナナの持論であった、のだが。


「そうですか。では。」


 反論もせず、先生が一言呪文を発すると、落ちたチョークは再び飛行しナナの後頭部に当たった。


「あいたっ!」


 予想しなかった痛みに、思わずナナは悲鳴を上げる。


「いいですか?このように、魔法は物理法則を超越します。戦士といえども、魔術を知らないとこのように痛い目にあいますよ?」


 そして、先生は念を押すように一言付け加えた。


「わかりましたか?」

「……はい。」


 昨日も魔術知識不足で困った事を思い出し、ナナは珍しく素直にうなずくと教室は笑いに包まれた。




 授業も終わり、ウエトリア先生が教室から出ていくと、ナナの元に友人たちが集まってきた。


 そのリーダーシップから委員長と慕われてはいるムギ(委員長というわけではない)に、カタコトの獣人ニニ。とはいっても、ほとんどの獣人がカタコトなのだけど。


「どうしたのナナ。黄昏るなんて、珍しい。」

「なんかあったのカ?」


 心配しに来たのか、それとも笑いに来たのか。判断がつかない軽口で二人は落ち込むナナを励ました。


「別に。笑いたかったら笑っていいのよ。」

「ははは、ごめんごめん。そんな用じゃないんだ。ナナは新しい先生がきてること知ってる?」

「それが?」


 名のある冒険者を次々と教師として登用してる学園である。新人教師が赴任してくるなんて珍しくもない話だ。


「その人がイケメンの男の人だとしても?」

「ふーん。」

「あれ?興味ない?」

「そういうわけじゃないけど……。」


 2人はナナの反応に驚いた。


「どうしたのダ?ナナが大盛ごはンより好きっていってたイケメんだゾ?」


 ナナとて興味がないわけではない。しかし、昨日の出来事。ナナはあの男のことを思い出していた。イケメンという情報だけではどうにもならないものがある。


(やっぱり男は中身よね。)


 そしてあの男、変態ではあるものの見かけだけはかなりの上位であった。いくら新任教師がイケメンだといっても、あれを超えるのは至難の業。そもそもあのレベルのイケメンがそこら中に転がってたら苦労はしないのである。


「ううん、なんでもない。続けて。」

「えっとね、それを聞いたホイたちが偵察にいってたんだけど。かなり好感触っぽいんだよね。」

「ああ、あの3人組。」


 ナナは、いつもつるんで行動している3人組を思い出していた。確か、ホイ、モイ、ヨイ、といったか。これと言って特徴はなく、クラスでは常にセットで呼ばれがちである。


「でさ、見に行かない?」


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