01-8
遅い援軍が到着したのは、そのあとだった。空に浮かぶ魔法の火に照らされた人影が2つ、こちらの方に向かって来る。
「あらあらあら、終わった後かしら?」
「ギャハハハは、もう終わっテら。」
あらあらあら、というのはビーチェ先生。アラサーの少し小太りの保健の先生で、ナナたち戦士科の生徒にはよくお世話になっている。そしてギャハハハはと笑うのは、縞々の鍵尻尾が特徴的な獣人のゾゾ。この学園のOBで、卒業後も警備をちょくちょく担当していたりする。
「もう、遅すぎ!」
なにもかもが終わった後である。ナナは文句を言った。
「ごめんなさい、すこし化粧に時間が掛かってしまって、ね。」
ビーチェ先生は茶目っ気たっぷりに舌を出したが、別にかわいくはない。それもあってか、いらいらが募る。
「こんな時に化粧ですか!?何やってるんです!」
ところが、ビーチェ先生は逆にナナを問い詰めた。ナナの鼻先に人差し指をつきつける。
「何やってる、と言いたいのはこちらの方ですよ。学園があなたたちにある程度の自由を与えてるのは、自分で解決できる力を持っていると判断されたからです。少しは上級生の自覚を持ちなさい。いいですね?」
「は、はい」
早口で捲し立てられて、つい返事をしてしまったが、どうも納得いかない。悪いのは向こうである。
ナナは恨めしそうにビーチェ先生を見つめるが、先生はそんなこともお構いなしに見分を始めた。
「見たところ、こっちの怪しい男がこのかわいい女の子を襲ってきて、あなたが退治した、ってところですか?」
「違います。」
襲われたのはナナだし、この男が倒れているのも勝手に気絶しただけである。
「ギャハハハは、間違ってんじゃねーか。」
ゾゾが大声で笑ったのでビーチェ先生はふてくされた。先生のふっくらとしたほっぺがますます膨らむ。
「事情はあとで説明してもらいますよ。とりあえず、保健室まで運びましょう。女の子はちょっと心配だけど男の方は……あら?」
「先生、どうかしたの?」
「いいえ、なんでもないわ。とりあえず、気絶している二人を保健室まで担いでいきましょう。」
先生は何を感じたのだろうか。少し気にはなったが、二人はすぐ近くにいた人物、ナナは男を、ゾゾはミユを背中に担ぐ。
「お、スげぇ柔らかいものが背中に当たってる。ギャハハハ、こーいゥのをラッキースケベっていうのか?」
「……知らないわよ。」
(ラッキースケベって。あんたも女でしょうが。)
ゾゾのテンションについていけず、ナナは溜息をついた。しかし、ナナも背中にちょっとした柔らかいものを感じることがある。まったく、ゾゾが変なことをいうものだから、意識してしまうじゃない。
(うん、なるべく当たらないように担ごう。)
ナナは心の中で思うのだった。




