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男の正体

 よくわからない変態モンスターが倒されて一件落着、めでたしめでたし、というわけにはいかない。


「お疲れさま、だな」


 男が差し出した手にミユはチャンスを見逃さなかった。


「なんだこれは!」


 男には自分の手にはめられた、それを見て質問した。


「手錠よ。」

「違う!なぜ手錠をはめたか聞いてるのだ!」

「信用したわけじゃないからね。あなたも変態の一味なのよ。自覚ない?」


 そう、目の前には変態がまだ一人残っていたのだ。


「ミユ、あなたすごいわねぇ、どこから取り出したの。」

「冒険者たるもの、なんでも準備しておきなさい、ってね。特にわたしは力ではなんとかできない魔術師だからね」


 ナナは感心したように言うが、ミユは平然と答える。

 どうやら、先ほどの気付け薬の件といい、ナナにとっては少々冒険者の自覚が足りないようだった。少し反省する。


「あのキスか。それはすまないと思っている」


 少し考えた様子を見せ、男は頭を下げた。


「へー、2人、キスしたんだ!」


 ミユが食いついてくる。

 しまった。変なところに興味を持たれてしまった。状況説明したときはわざわざ隠していたのに。ナナは舌打ちした。


「ほら、早く質問しないと逃げられちゃう」


こういう時は話を変えてはぐらかそう。ナナは質問をせかす。


「それもそうね。あなたはなんでここに来たの?名前は?目的は何?」

「黙秘する。」

「うーん、これは警察に突き出した方がいいかな。」


 ナナとミユは状況を確認し、互いにうなずく。


「わかった。面倒事はやめてくれ。事情は話せる範囲で話す。」


 男は息をのむと、観念したのか、徐々に語りだした。


「私はウィード。……ある人に会いに来た。」


 ナナはミユと顔を見合わせると、頷きながら言い合った。


「やっぱり、ストーカー。」

「ここは警察だね。」


「断じて違う!」


 男は語句を荒げて反論するが。


「だってここ女子校だし、女子寮も近いし」

「やっぱり警察に」


「……名前は言えない。だが、俺はストーカーではない。少なくとも、この学園の生徒ではないからな。」


 焦ったように男は言う。

 ふむ。この学園の生徒ではないのか。女子人気も高い武術科のミランダさんか、分厚い眼鏡の生真面目な賢者のシプリさんかもしれない。


「私が会おうとしている人物はベルナースという名だ。これ以上は勘弁してくれ」


 ベルナース?聞いたことがない。教師でもないのだろうか。もしかしたら学園外部の講師にそんな名前の人がいるかもしれない。


「目的は分かったわ。では、なんで唾くれとかいったのかな?さっきの話と関係ないじゃない。」


 ミユは尋ねる。そうだった。目的は分かっても変態行為を許すわけにはいかない。


「唾液か。あれがないと私は力を発揮することができないのだ」

「つまりあなたは唾で変身するスーパーマンってことなの」

「うむ。そうなるか」

「って信じられるかボケー!」


 ナナ渾身の突っ込みをまともに受け、男はせき込む。あれ?さっきは躱されたのに、とナナは疑問を持つ。そもそもミユが手錠をかけられたのもおかしい。ショタにも敵わなかった相手に魔術師であるミユが手錠をかけられるのか。


 その様子をみてミユは笑いだした。


「へへ、私わかっちゃった。」

「何が?」


 釈然としないナナは、憮然とした表情でミユに聞く。


「さっきの活躍とは思えないほどの弱体化。そして、唾、いえ、特定の体液に対する反応。あなた、吸血鬼ね。」

「い、いや、そんなことはないぞ!」


 ミユの言葉にぴくりと右の眉を動かす。なるほど、わかりやすい。さすが魔術師、名探偵でも名乗ってもいいくらいである。しかし、吸血鬼にしては年を取りすぎてる。ミドルエイジの吸血鬼なんて古いタイプは絶滅したかと思った。


「まず、そのトレンチコート。これは日よけのためね。」

「そうだ。」

「トレンチコートの中が海パンなのはなぜ?変態だから?」

「違う!体液を吸収すると、体中の血が蒸発するほど熱くなるのだ。それも服を着られないほどにな。」


 なるほど、嫌な吸血鬼の生態を聞いた。全裸はいやだな。物語で知ったのとは全く違うイメージだ。


「さっきの銀髪君はお友達?」

「違う。あいつは弱かった。半端ものだろう。」


「吸血鬼がなんで唾を集めてるの?」

「一番簡単な体液の収集方法だからだ。」


「吸血じゃダメなの?」

「駄目だ。あれは人に影響し眷属にしてしまう。」


 先ほどの銀髪とミユの関係ね、とさきほどの変顔を思い出し、ナナは思わず吹き出す。


「じゃあ血を別の方法で採取すれば」

「それは難しいだろう。」


 たしかに、突然血を分けてくれ、とか言われても困るし、呪術に使われてしまうかもしれない。だからといって唾をくれといわれても困るが。


「唾以外の体液でも代用できないの?」

「代用はできるが…唾以外の体液を採取していいのか?」

「やったらだめよ。変態さん」


 察したナナは釘をさす。

 ともかく、話を聞いていくうちにただの変態ではないという事はわかった。


「なんで眷属化にこだわるの?吸血鬼らしくないじゃない」

「もういいだろ?それを教える必要はない」


 質問を間違えたか、機嫌を損ねてしまったのか。男は黙り込んでしまった。何か秘密でもあるのだろうか。


「私は吸血鬼だが、吸血鬼でありたくない、それだけだ。」


 よくわからないけど、変わった吸血鬼もいるんだなとでも思っておこう。変態だし。と、ナナは付け加えた。


「あなたが吸血鬼なのはわかったわ。でも、唾が魔力の源ならあらかじめ用意しとけばよかったじゃない。なんで現地調達なんかするのよ。」

「用意はしていたんだが……入国の際、検疫に引っかかってしまってな……」

「それはそうね。」


 納得した。ナナはここまで聞いて、8割方許してやろうとは思った。しかし残りの2割の心が騒めく。


「理由は分かったわ。でも野放しにはできない。やっぱり警察ね。乙女の唇奪っておいて無罪はないわ。」

「へー、ナナちゃん乙女だったの。」


 う、うるさい!乙女心はいつでも新品同様なんだよ!とナナは心の中で叫び、


「話が違うじゃないか!私は変態ではない!」


 と、男は街中で叫んだ。

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