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悪党一家の愛娘、転生先も乙女ゲームの極道令嬢でした。~最上級ランクの悪役さま、その溺愛は不要です!~  作者: 雨川 透子◆ルプななアニメ化
〜第2部 忠臣義士の番犬従者〜

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91 隠された方法


 驚いて目を丸くしたフランチェスカに対し、レオナルドは平然とした笑みを浮かべたままだ。


「学生とはいえ、俺はアルディーニ家の当主です。家督を継いだ人間は、十六歳以上なら成人と同等の扱いになるでしょう?」

(確かに……! この国の成人年齢は十八歳だけど、レオナルドは成人としての権利を持ってるんだ!)


 しようと思えば結婚だって、すぐにでも出来る立場なのである。ソフィアはレオナルドの申し出を聞き、ふむ、と目を細めた。


「構わないよ。アルディーニ当主との繋がりが出来るとあれば、賓客たちも大歓迎だろうからね。ただ」


 そこで言葉を切ったソフィアが、ちらりとフランチェスカを一瞥する。


「婚約者の前でしていい話なのかい? うちの夜会が未成年お断りなのは、うちの妹分たちを伴う場だからだよ。普通の夜会と変わりないとはいえ、男たちが伴うのは自分の妻や恋人じゃない」

「ああ、もちろん俺に女性は付けなくていいです。俺はこの先金輪際、フランチェスカ以外をエスコートする気はありませんので」

(んん?)


 にこっと笑って言い切ったレオナルドに、フランチェスカはなんとなく違和感を覚えた。


(……レオナルド、なんだか何かを隠そうとしてる……?)


 レオナルドの振る舞いに、特に不自然な点がある訳ではない。

 けれどもその自然な様子こそが、フランチェスカにとっては引っ掛った。そういえば彼は先ほど、森の中でこう言っていたのだ。


『きっとどれだけ頑張っても、私は入れてもらえないよね』

『上品で紳士的な社交の場とはいえ、一応は娼婦を伴った接待の場だからな。……まあ、参加する方法が無い訳でもないんだが』


 つまりレオナルドは、フランチェスカが夜会に参加する方法を思い付いている。


(私がその方法に気付く前に、手早く話を纏めようとしてるんだ)


 むむむ……とレオナルドのことを見詰めるが、彼はわざと素知らぬ顔をしていた。


「お嬢さんもアルディーニも、しばらくはうちの貸し別荘に滞在するんだったね。アルディーニには追って詳細を連絡するよ」

「有り難い。さぞかし錚々たる顔触れが揃っているのでしょう? 楽しみにしています」

「サヴィーニ侯爵も随分前から、今回の夜会に賭けているようだからねえ」


 ソフィアは言い、フランチェスカにウィンクをひとつ散らした。


「ご学友にもよろしく伝えておいてくれないかい? セラノーヴァの若さまと……勇敢に戦ってくれた、お嬢さんの『お世話係』に」

(……ソフィアさんも、グラツィアーノの出自を察してるみたい)


 あれだけグラツィアーノが父親と似ていれば、それも無理はないのだろう。フランチェスカはレオナルドに続いて立ち上がりながら、しっかりと頷いた。


「はい。伝えておきます」

「ありがとう」


 ソフィアが少しだけ寂しそうに笑ったように見えたのは、フランチェスカの気の所為だっただろうか。


(グラツィアーノのお母さんは、元々ラニエーリ家の娼婦だった人だもん。ソフィアさんと面識があってもおかしくないよね)


 高級娼婦だったはずの女性が、いつのまにか貧民街で貧しい暮らしをし、病の末に亡くなっている。本来ならラニエーリ家では、娼婦が子供を産んだあとも、その子供ごと手厚く守られるはずだ。


 グラツィアーノの母にどんな事情があったのか、ゲームでも詳細には語られていなかった。ソフィアはそのことについて、何か思うところがあるのかもしれない。

 ソフィアはそれを誤魔化すように、煙草をふかしながらにこりと笑った。


「そうだお嬢さん。この森で過ごしている間、演奏会や食事も楽しんで行くんだろう? 普段と違うおめかしがしたくなったら、遠慮せず私におねだりにおいで」

「普段と違うおめかし、ですか?」

「そう。大人っぽいドレスがたくさんあるから、お嬢さんを可愛く着飾ってあげる」

「わあ! ありがとうございます」


 男所帯で過ごしてきたフランチェスカは、誰かと衣装の貸し借りをしたことがない。とても魅惑的な提案に、わくわくしながらお礼を言った。


(お友達とは違うけど、こういうのも初めて! 折角だから一度お願いしてみようかな?)


 そんな風に思っていると、レオナルドが後ろからフランチェスカの肩に手を置く。


「フランチェスカの着るドレスなら、これから俺が嫌と言うほどプレゼントするさ。どんなのがいい?」

「レオナルド、分かってない。こういうのは『素敵なお姉さんに貸してもらう』からわくわくするんだよ?」


 フランチェスカが反論すると、ソフィアはくすっと笑った。


「素敵なお姉さんだって、嬉しいねえ。うちの妹分が言ってた通り、ついつい可愛がりたくなってしまうお嬢さんだ。だけど……」


 そんな彼女が、緩やかに目を眇める。


「あんたたち、この森に一体何をしに来た?」

「――……!」


 その瞬間、部屋の空気が一瞬で変わった。




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