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悪党一家の愛娘、転生先も乙女ゲームの極道令嬢でした。~最上級ランクの悪役さま、その溺愛は不要です!~  作者: 雨川 透子◆ルプななアニメ化
~第1部 極悪非道の婚約者~

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55 辿り着いた推測

 フランチェスカの世話係として、グラツィアーノはずっと傍にいてくれた。だが、その表情は不満げだ。


「あいつに会う前は、『裏社会になんか関わらない』が口癖だったでしょ? ……もっとも実際にはあちこち首を突っ込んで、俺たちクズの世話を焼いてましたけど。なのになんでお嬢があいつの所為で、余計な手間隙かけなきゃいけないんすか」

「余計な手間暇なんかじゃないよ。むしろ、私からパパに頼んでやらせてもらってるの」

「お嬢が庇う必要なんかないでしょ。諸々どうせあいつが犯人ですよ。セラノーヴァ家の計画通りに動いてもらって、アルディーニを追い詰めさせればいい」

「その計画に乗った場合、リカルドに決闘で勝ってもらって、一時的にでもリカルドと婚約しなきゃいけなくなっちゃう」

「……………………」


 その瞬間、グラツィアーノはますます不機嫌そうな顔になった。

 フランチェスカの方も、それを見て少し心配になってしまう。


「ねえグラツィアーノ、最近なんだかずっと拗ねてるね……? 先週の会合のことだって、本当は内容を知ってたくせに、知らないって答えたし。もしかして反抗期!?」

「別に? 全然? まっっったく? 俺はいつだってお嬢には素直ですけど?」

「その発言はさすがに厚かましすぎる!!」


 反抗期のグラツィアーノのために、フランチェスカは本を閉じる。


(グラツィアーノは私の護衛兼お世話係として、仕事中や学院での時間以外はいつも傍に居なきゃいけないし。退屈させちゃってるのは間違いない)


そして、グラツィアーノの持って来てくれたオレンジジュースを飲むことにした。


「ん。……美味しいよグラツィアーノ、ありがとう」

「……」


 そう言うと、グラツィアーノはふいっとそっぽを向く。


「……最初から、さっさと休憩してくれればいいんですよ。お嬢は短期決戦型で、根を詰めるなんて向いてないんだから」

「そうだね。ふふ、心配かけてごめんね」


 こういった反応が返ってくるのは、グラツィアーノが照れているときなのだ。


(よかったあ、反抗期じゃなくて! ……確かに、私が裏社会を徹底的に避けてきたことを知ってるグラツィアーノから見たら、異常事態に映るよね)


 机上に目を落とす。広げた紙に書き綴ったのは、読み漁った資料から書き取ったメモだ。


(隣国との商流。煙草の生産と販売。銃の流通ルート……五大ファミリーの家業について私が調べてるなんて、心配されて当然だ)


 グラツィアーノはコーヒーカップに口を付け、もう片方の手はスラックスのポケットに突っ込んだまま、フランチェスカの手元を覗き込んでくる。


「お嬢が調べられる範囲なんて、当主ならとっくに把握してるんじゃないすか? 今更そうやって睨めっこする必要あります?」

「そうだよ。パパと私では視点が違うの」

「ふーん。へえー」


 疑わしそうな声音だが、これは本当だ。なにせフランチェスカには、前世とゲームの記憶がある。


(あの夜会の出来事が『黒幕』のスキルによるものなら? 主要キャラクターの中で、私が全スキルを把握できていないのは、入手可能キャラとして実装されていないキャラクター……いまの段階だと、それはレオナルドだけだ)


 文献のページを捲りつつ、不安になりながらも思考を進めた。


(レオナルドの行動は、絶対的に怪しい。そのことはちゃんと理解して、考えを進めないと……)


 リカルドの父が、レオナルドを黒幕だと判断しているのは無理もない。

 前世のフランチェスカや、他のプレイヤーたちだって、黒幕として描かれていたレオナルドの姿が真実だという前提でストーリーを読んでいた。


(見ず知らずの『黒幕』のことを想像するより、私の知ってるレオナルドと、ゲーム世界のことを考えた方がいいよね! シナリオを整理しよう)


 あくまで前向きな心境のまま、フランチェスカは考える。


(ゲームの一章後半も会合が行われて、両家の同盟が結成される。そこには両家の当主とリカルド、それに主人公が揃っていて……現れるのはレオナルド。両家の同盟を潰すために、強引な手段に出るけれど、みんなで力を合わせて危機を脱する……)


 そのとき、不可思議なことに気が付いた。


(……ゲーム一章のクライマックスは、第十七地区の屋敷で事件が起きる。それが解決して、両家の同盟が無事に結ばれる。そしてこの世界でも、レオナルドからは第十七地区の屋敷に呼び出されていて、パパたちはそこでレオナルドの条件を飲むか返事をする。その結果次第では、うちとリカルドの家の同盟が結ばれる。起きる出来事の大枠は近い、だけど)


 ぱちぱちと瞬きをして、自分の思考をもう一度さらった。


(――どうして、『起きる出来事の大枠は近い』の?)


 それが不自然であることの、決定的な理由があるのだ。


「もしかして……!」


 フランチェスカは声を上げ、先ほど書架に戻した本を大急ぎで取りに戻った。


「お嬢?」

「グラツィアーノ、手伝って欲しいの! 調べたいことがはっきりした、ここからは目を通したい資料が絞り込める!!」

「いったい何を……」


 フランチェスカは、青褪めている自覚のある顔を伏せた。


(薬物事件の黒幕。もしかしたら、その人は)


 少しだけ震える声で、ある人物の名前をぽつりと呼ぶ。


「……リカルド……」



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