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悪党一家の愛娘、転生先も乙女ゲームの極道令嬢でした。~最上級ランクの悪役さま、その溺愛は不要です!~  作者: 雨川 透子◆ルプななアニメ化
〜第4部 知勇兼備の生徒会長〜

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274 仕掛け


 踏み付けられたルキノの双眸が、フランチェスカを強く見据える。


「自国のおかしさを享受して、のうのうと生きてる。そんな奴らが知ったように、僕に命令するな……!」

「この国の、おかしさ……?」

「あんたもどうせ、利用されて……うあっ!」

「戦闘慣れしていない王子さまに、僭越ながら助言を申し上げよう」


 レオナルドが、ルキノの後頭部に足を乗せた。


「頭に打撃を受けたときは、無理に体を動かさない方がいい。危ないぞ?」

「く、そ……」


 軽い声音とは裏腹に、レオナルドはルキノに頭を下げさせる。


「こうやって、そんなに体重を乗せられていないうちは、頭を踏まれても抵抗せず静かにしていろ。じゃないとほら、眩暈を感じるだろ?」

(レオナルド……)


 しかしルキノは、小さな声で吐き捨てた。


「……この程度で、僕を捕えられたとでも、思ってるの?」

「へえ」


 ルキノの周囲を、淡い光が取り巻いた。


「残念だったね。このまま僕を尋問にでも掛けて、クレスターニさまの情報を得たかったんだろうけれど」

(……ルキノの体が、光に包まれて……)


 その光景に、フランチェスカは息を呑む。


(――これで)


 それはなにも、ここで彼が逃亡に関するスキルを使うであろうことが、想定外だったからではない。


(『期待した通り』の、未来になった)


 レオナルドが、全てを見通した目でルキノを見下ろした。


(ルキノはきっと、ここから転移する。ルキノ本人、もしくは別の誰かのスキルで)


 数日前、夜にひとりでロンバルディの屋敷を訪れたフランチェスカは、ルキノの出現に驚いた。

 それはルキノに一切の気配がなく、突然そこに『居た』からだ。あれは恐らくスキルによって、その場に転移していたのである。


「僕を無様に取り逃して、悔しがるといい」

(違うよ。ルキノ)


 ルキノの体が、光に包まれる。


(ごめんね。……あなたを傷付けないように戦ったことも、たくさん時間を稼いだのも、本当は全部理由がある)


 それは数日前、レオナルドとエリゼオとカルロと共に、話し合いをしていたときのことだ。


『あの王子さまに初めて会ったとき、悪戯ついでに仕掛けをしてある。発動させるためには王子さまの血と、少しの時間が必要だ』


 フランチェスカは両手を握り締め、ルキノを見据えた。


(私たちの今の目的は、ルキノ君を捕まえることじゃない。この戦いでの、私たちの『勝利条件』は……)

「こんな国……」


 ルキノが声を上げると同時に、レオナルドが微笑む。


(……信奉者に『レオナルドの支配スキル』を施して、それに気付かせずクレスターニの元に帰すこと……!!)

「さっさと、滅んでしまえ!!」


 光が走り、ルキノの姿が掻き消えた。


「っ、レオナルド……!!」

「ああ」


 レオナルドが頷いてくれたのは、『仕掛け』が成功したという合図だった。

 フランチェスカが安堵を抱きそうになった、そのときだ。


「レオナルド君、フランチェスカちゃん、伏せて!」

「――――!!」


 未来を察知したらしきエリゼオが、そう叫んだ。




***




「……?」


 浅い眠りから意識を覚まして、フランチェスカは目を開けた。


「フランチェスカ」

「……レオナルド……?」


 どうやら気を失っていたらしい。つい最近もこれと似た目覚めを経験したような気がして、目を擦りながら上半身を起こす。


「私、一体どうして……」

「あのあと大きな揺れがあって、地下の形が変動したんだ」


 レオナルドに支えてもらいながら、ゆっくりと辺りを見回した。

 フランチェスカたちの傍らには、金色に輝く聖樹が変わらずに聳えている。しかしこの空間は、先ほどまでの場所よりも一回り狭くなっていて、新しい土壁が現れているようだ。


「覚えてないか? 君はこれを回収しようとして、土壁に呑まれそうになったんだよ」

「……あ」


 レオナルドが見せてくれたのは、硝子の破片だ。

 小瓶の底の部分らしき破片には、その湾曲部分に少しだけ、赤い液体が残っていた。


「ルキノが持ってた、クレスターニの血……」


 その説明に、意識を失う前のことを思い出す。


 エリゼオの『伏せて』という合図のあと、すぐさま地震に襲われた。地面の一部が隆起したとき、フランチェスカの視界の端には、亀裂の中に落ちてゆく小瓶が目に入ったのだ。


「そうだ。確か、エリゼオが私の動きを予知して、レオナルドに叫んで……」

「君のスキル強化のお陰で、少々の変更が発生した未来でも、ある程度は予知出来るようになったみたいだな」


 ドレスに縫い付けた強化素材の宝石は、半分ほどが砕けていた。

 無我夢中で細かく数えてはいないが、どうやらエリゼオの未来予知のスキルについては、六段階目まで上げてしまったようだ。


「この血、クレスターニの正体を探す手掛かりになるよね?」

「……ロンバルディ家の学者に力を借りれば、その可能性はあるが……」


 レオナルドは、ぎゅっとフランチェスカを抱き締める。


「君は本当に、自分の安全を捨てることに躊躇が無さすぎる」

「ご、ごめん……」


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