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256 小さな光(第4部6章・完)

※前半部分に前話との重複があったため、2/28の13:45ごろ、前半部分にあった重複部分を削除する修正を行ないました。今話は短めのボリュームとなっています。申し訳ございません……!次話を前倒し更新しております。


「歩けますか? 生憎いま居る者の中で、ここまで降りて来られるのは私だけ。手を貸す必要があれば、順番に……」

「…………」


 フランチェスカの警戒を汲み取ったのだろう。ラディエルはそこで言葉を止め、苦笑した。


「ご安心を、私は幻覚ではありませんよ。あちらに出来た入り口は、聖樹を管理するためのものです」

(……これが本物の聖樹だって、あっさり認めた……)

「あなたたちが落下した後、どの地点にいるのかが中々掴めなかったのですが。この空間に来てくださったお陰で、聖樹に反応がありました」


 とはいえ、フランチェスカたちが警戒しているのは、幻覚を危惧してのことではない。


「歩けるようでしたら、すぐにここから出ましょう。地形が変わってしまうと面倒です」

「お待ちを、司教殿」

「おや?」


 レオナルドが、フランチェスカを庇うようにして歩み出た。


「地上に抜ける前に、まずは確認しておきたいことが。ここを出ても、俺たちを拘束したり、記憶操作を施すようなことはしないとお約束いただけますか?」


 有無を言わせない笑顔のレオナルドに、エリゼオが重ねる。


「もちろん、検査または治療と称したスキルの使用も拒否させていただきますね」

「もちろんですよ。『子供たち』」


 司教ラディエルは苦笑して、頷いてくれた。


「そのようなことは、国王陛下がお許しになりません。陛下にとってあなたたちは、守るべき存在なのですから」

(……ふたりとも、あんまり信用してなさそうだけど……)


 フランチェスカは、レオナルドとエリゼオの背中をそれぞれ押す。


「行こう! レオナルドもエリゼオも、私よりもたくさん歩き回ってくれたんだから。早くあったかい所に戻って、全力で休んでくれないと駄目だよ」

「……フランチェスカ」


 レオナルドは微笑み、フランチェスカの腰を抱くように手を回す。


「ああ。もちろんだ、君の言う通りにしよう」

「すぐにそうやってぎゅっとする……!!」


 レオナルドの想いに向き合うとは決めたものの、人前では恥ずかしい。そんなやりとりを見ていたエリゼオが、にこりと笑って冗談を言った。


「君たちは、見ていて羨ましいくらい仲良しだなあ。頼めば僕も混ぜてくれる?」

「エリゼオって本当に、何を考えてるかよく分からないよね……」


 レオナルドにエスコートされながらも、地上への階段へ向かう。

 けれどそのとき、レオナルドが後ろを振り返り、何かを見据えたような気がした。


「レオナルド?」

「ん? ……なんでもないよ」


 レオナルドは、聖樹を見たのだろうか。

 あるいは後ろを歩くエリゼオに、なんらかの注視を注いだのだろうか。


 そんな疑問を抱き続けることは、出来なかった。


「――――フランチェスカ!!」


 地上に出たフランチェスカは、駆け付けてくれた父の顔を見た途端、唐突な眠気に襲われてしまったからだ。



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第4部7章へ続く

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