表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪党一家の愛娘、転生先も乙女ゲームの極道令嬢でした。~最上級ランクの悪役さま、その溺愛は不要です!~  作者: 雨川 透子◆ルプななアニメ化
〜第4部 知勇兼備の生徒会長〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

220/324

217 黒と紫

(これで、分かってもらえたかな)


 片手で髪を押さえたフランチェスカは、こっそりと小さな溜め息をついた。


(ごめんね、エリゼオ。……だけど、これ以上は……)


 その直後だ。


「そっか」


 ぽつりと呟いたエリゼオが、フランチェスカを見て微笑んだ。


「レオナルド君が執着する理由が、少し分かったかもしれない」

「エリゼオさん?」


 楽しそうにそんなことを口にして、エリゼオが再び一歩を踏み出す。

 フランチェスカの方に、あまり大きな足音を立てず、わざとゆっくり近付いてくるのだ。


「そもそも君は、どんなにささやかなものであろうとも、僕の見た未来をひとつ変えたんだ」

「……偶然です。生徒会役員の人たちが、私のことを尾行していましたよね? あなたが未来視を利用して何かしてくるんじゃないかって思って、注意深く周りを観察しただけ……」

「嘘つき」


 橙色の瞳が、フランチェスカを間近に覗き込む。


「未来を変えるということは、世界の運命を変えるということ」

「……止まってください」


 フランチェスカが一歩後ろに下がると、エリゼオは同じだけ近付いてきた。


「あまり、こっちに来ないで」

「こんな女の子が居たなんて、想像もしていなかったな」


 エリゼオは、その美しく儚いかんばせに笑みを浮かべ、やさしい声音で言い切った。


「…………君も、世界を変える資格がある人間の、ひとりだったんだ」

「…………っ」


 嫌な予感が、ぞくりと背筋を這い上がる。


「もう帰ります。明日は期末テストなんだから、エリゼオさんも……」

「『国王陛下』」


 思わぬ人物を呼ぶ言葉に、フランチェスカは眉根を寄せた。


「あのお方と、何か秘密の話をしているの?」

「え……」

「そうであってもおかしくないよね。だって、君は『切り札』なんだもの」

国王陛下(ルカさま)? 切り札?)


 不思議な言葉を口走るエリゼオに、フランチェスカは言葉を返した。


「陛下じゃなくて、ルカさまって呼ぶようにって。ルカさまが私に仰ることなんて、それくらいで……」

「ふふ。そうなんだ」


 何故だか楽しそうに笑うエリゼオに、ますます警戒心が募ってゆく。

 エリゼオはフランチェスカの手首をやさしく掴み、こう言った。


「僕がどうしてこんな質問をするのか、教えてあげようか」

「!」


 フランチェスカの疑念を見抜いたかのような、甘い声音だ。


(……エリゼオは、『私』に関する何かを知っているの?)


 ロンバルディ家は、賢者の書架を管理している。

 そこは、フランチェスカが自身の転生の秘密を探るために、どうにか赴きたい場所だった。


(エリゼオが情報を持っていたとしても、おかしくはないのかもしれない。だけど、こんなの鵜呑みになんか……)


 そのときだった。




「フランチェスカに何をしている?」

「!」




 響いたのは、普段通りに笑みの音を湛えながらも、いつもより低い『彼』の声色だ。


「……!」


 顔を上げたフランチェスカは、彼の名前を呼ぶ。


「レオナルド……」


 くちびるにだけ微笑みを浮かべたレオナルドは、金色の双眸に暗い光を宿らせ、エリゼオに静かなまなざしを注いでいた。


「やあ、レオナルド君」

「エリゼオ。お前でも馬鹿な真似をすることがあるなんて、意外だったな?」


 石床を歩いてくるレオナルドの振る舞いは、一見すれば余裕のあるものだ。


 外套のポケットに手を入れて、歩き方も悠然としている。アルディーニ家の当主に相応しい、落ち着いた風格を持っていた。


(こんなに無防備に見えるのに、ぜんぜん隙がない。いつものレオナルドだけど、それ以上に……)


 フランチェスカは、思わずこくりと喉を鳴らす。


「まさか、お前が……」


 微笑みを湛えたレオナルドは、明確な敵意と冷たい殺気を、真っ直ぐにエリゼオへと向けていた。


「――そんなに俺と敵対したがっているだなんて、知らなかった」

(…………っ)


 冷え切った声は、その殺気を直接受けた訳ではないフランチェスカでさえ、背筋が凍り付きそうなほどだった。


「おいで。フランチェスカ」

「わ……」


 こちらに歩いてきたレオナルドが、自然にフランチェスカを抱き寄せて、エリゼオの手から逃れさせてくれる。

 その上で、今度は自分がフランチェスカの腰に腕を回し、間近に見下ろしてにこりと笑った。


「もういいだろう? さあ、そろそろ帰ろう」

「レオナルド……こんなに急いで来てくれたの?」

「番犬は、君のためになることであれば、俺の『指示』に対しても聞き分けが良い」


 レオナルドの微笑みから、グラツィアーノが転移スキルによって、レオナルドを瞬時に移動させたのだと分かった。


(男子たちに囮になってもらう条件は、私がエリゼオと少し話したら、みんなのうちの誰かが私に合流すること。……きっと、レオナルドが一番に来てくれる気がしてたけど)


 フランチェスカは振り仰ぎ、エリゼオと対峙するレオナルドを見上げる。


(…………)


 数分前のエリゼオは、こう口にした。


『僕がどうしてこんな質問をするのか、教えてあげようか』

(なんだか、さっきのレオナルド)


 続きを聞くことが出来なかったのは、偶然のタイミングなのだろうか。


(……エリゼオの言葉を、あれ以上私に聞かせないように、遮った……?)


次にくるライトノベルを決める『次ラノ』のエントリー期間スタートです!


雨川作品で今年エントリーできるのは以下となっております。よろしければエントリー応援のほど、何卒よろしくお願いします!

-------------------------------

エントリー応援▶︎

https://static.kadokawa.co.jp/promo/tsugirano/

-------------------------------

悪党一家の愛娘、転生先も乙女ゲームの極道令嬢でした。~最上級ランクの悪役さま、その溺愛は不要です!~


悪虐聖女ですが、愛する旦那さまのお役に立ちたいです。(とはいえ、嫌われているのですが)


雇われ悪女なのに、冷酷王子さまを魅了魔法で篭絡してしまいました。不本意そうな割には、溺愛がすごい。


死に戻り花嫁は欲しい物のために、残虐王太子に溺愛されて悪役夫妻になります! 〜初めまして、裏切り者の旦那さま〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ