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【ポップアップ1/9〜】悪党一家の愛娘、転生先も乙女ゲームの極道令嬢でした。~最上級ランクの悪役さま、その溺愛は不要です!~【アニメ化】  作者: 雨川 透子◆ルプなな&あくまなアニメ化
~第1部 極悪非道の婚約者~

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19 攻略しちゃっていませんか?


(友達作りも婚約解消も上手くいかないうちに、五月になっちゃった。ゲームはいよいよ、メインストーリー第一章の開始月だ)


 フランチェスカがスキップした操作説明(チュートリアル)では、仲間のスキル育成レッスンや、能力測定のミニゲームなどが行われる。

 一通りの説明が終わったあとは五月になり、いよいよ本格的なゲーム内ストーリーが始まるのだった。


操作説明(チュートリアル)でどの人物とも出会ってない私は、誰のことも育成対象にしてないから大丈夫! 裏社会の巨大な陰謀に巻き込まれたりしないし、そんな中で他家のご令息たちと絆を深めたりしない。うんうん、この一点だけは順調のはず!)

「フランチェースカ? どうせ考え事するなら、俺にその可愛い顔を見せていてくれ」

「……」


 両手で頰を包むように、レオナルドの方を向かされる。

 ぱちぱち瞬きをしたフランチェスカは、そのときひとつのことに思い当たり、さっと青褪めた。


「……ん?」

(――ちょっと待って)


 突然湧き起こった考えを、否定するために振り返る。


(ゲームのフランチェスカは、プロローグの誘拐事件で選んだファミリーのキャラクターを入手して、ストーリーに従いながら操作説明(チュートリアル)を受ける。そこで入手キャラのスキルを育成したり、一緒に勉強するミニゲームの操作を覚えて、第一章のメインストーリーを迎えるわけだけど)


 フランチェスカは、目の前にいる絶世の美男子をじっと見据えた。


(……誘拐事件で出会って、関係が生まれて、スキルを育成して。挙げ句の果てには一緒に勉強イベントまで起こしちゃってる、他ファミリーの主要キャラクター……)


 その条件に当てはまる相手が、いまここにいる。


(――――私。まさか、レオナルドを『入手』して育成してることになってたり、してないよね――……?)


 ゲームのシステムと現実は違う。


 ゲームでいうところの『課金によるキャラの入手』が、いまいる現実ではどんな概念に置き換わっているのか、フランチェスカには想像がつかなかった。


 しかし、いまこうしてレオナルドと一緒に過ごしているのが、そういった前提によるものだとしたら。


「あわ。あわわわわ……」

「ははは、どうした急に震え出して。本当に見ていて飽きないな」

「わたし! グラツィアーノに用事があったのを思い出したから!」


 フランチェスカは慌てて席を立つと、急いでノート類を整理した。レオナルドは頬杖をついたまま、その様子をじっと眺めている。


「あいつか。君のファミリーの最年少構成員」

「学院でそういう発言は禁止! グラツィアーノは家の執事で、私の登下校の世話役を兼ねて入学したことになってるの!」

「ふーん……」


 どこか含みのある相槌を打ったレオナルドに、フランチェスカは告げる。


「じゃあね、勉強教えてくれてありがとう!」


 グラツィアーノに用事は嘘だ。とにかく一度、レオナルドから離れて、現状を整理したかった。

 けれどもレオナルドは、名残を惜しむようにフランチェスカの手を掴むと、何もかも見透かすような金の瞳で見上げて微笑む。


「君に頼られるのは気分が良い。……いつでもどうぞ、フランチェスカ」

(ゲーム黒幕の発言でなければ、これほど心強いこともないんだけどね!!)


 ぐぬぬ……という心境になりつつも、フランチェスカは慌てて第三図書室を出た。


(どうしよう、どうしよう! 考えるほどに、結局ゲームが進行してるような気がしてきた!)


 考えてみれば、ここまでレオナルドがフランチェスカに接触してくるのも、おかしな話なのだ。


 ゲームで初めてレオナルドに会うのは、これから始まる一章の後半のはずだった。シナリオ上、レオナルドは学院に来てもおらず、彼とのイベントが進行することもない。


 いまの現状は、レオナルドとの関係性が、ゲームでいうところの操作可能(プレイアブル)キャラクターとして進んでしまっている可能性がある。

 ノートを抱いたまま廊下は走らず、早足でずんずん突き進みながらも、フランチェスカは必死に頭を巡らせた。


(第一章の出来事が起きるのはまさに今の時期、五月上旬。順当なストーリーの場合、主人公が次に関わるのは……)


 一年生の教室がある校舎に入り、グラツィアーノの教室を目指しながら、廊下の曲がり角に至った瞬間だ。


(この気配!)


 ぴんときて、すぐさま身を躱した。

 背中をぴたっと壁にくっつけ、一体化のようなイメージで停止する。周囲を歩いていた生徒がざわつくものの、いまは気にしていられない。


 フランチェスカの懸念通り、その人物が現れる。廊下を曲がってきたその人物に、一斉に注目が集まった。


「見て。リカルド先輩だわ!」


 雪の色に近い銀の髪は、整髪剤できちんと整えられている。


 意思の強そうなまなざしと、一文字にかたく結ばれたくちびる。

 眉間に僅かに皺が寄っており、姿勢はまっすぐだ。どこか怒っているように見えるのだが、それでも気品が漂っており、凛とした美しい面差しだった。


(やっぱり。――リカルド・ステファノ・セラノーヴァ……!)


 フランチェスカは彼を知っている。

 ゲームの登場人物であることはもちろん、カルヴィーノ家の娘として、遠巻きに彼の姿を見たことがあった。


(あの人が、五大ファミリーの中でも伝統を重んじるセラノーヴァ家のひとり息子。そして、ファミリーの次期当主なんだ……)


 そしてリカルドは、フランチェスカの前でぴたりと足を止める。

 通りすぎるはずの人物が立ち止まったので、思わず両手で口を塞いだ。気配を殺しておけばよかったと思うけれど、いまからやっても不審がられる。


(まずい。ひょっとして、私の顔を知られてる?)

「……そこのお前」

「ひゃっ、ひゃい!!」


 氷のように冷たくて綺麗な顔が、不機嫌そうに歪んだ。

 そういう表情も人気があるのか、廊下にいた女子たちが声を上げる。しかし本人は構うことなく、フランチェスカの方に歩いてきた。


(どうしよう。『カルヴィーノの娘』とか呼び掛けられたら、どうにもならな……っ)




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