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185 本物の願い

『あくまな』スペシャルカウントダウン中!


レオナルドの魅惑のボイスを再生▶︎

https://x.com/ameame_honey/status/1793477054106886581?s=46


***


(……どうにか、間に合った……!)


 ダヴィードの元に駆け付けたフランチェスカは、浅い呼吸を繰り返していた。


 先ほどまで行っていたソフィアとの『話し合い』は、この惨状に関する報告を受け取ってすぐに中断されている。


『……こうなったらもう、仕方がない』


 ソフィアは苦渋の表情を浮かべ、構成員にこう告げた。


『化け物どもが沸いた通りを封鎖しな! ひとりたりとも通すんじゃない。ただし手荒な真似はせず、各自のスキルを使って気絶させるだけに留めるんだ』

『承知しました。この件、坊っちゃまには……』

『いいから早く行くんだよ!! 私もすぐに現場に向かう、さっさとしな!!』

『っ、は!!』


 構成員が駆け出した部屋には、ソフィアとフランチェスカ、レオナルドだけが残される。


『……お嬢さん、アルディーニ、帰っておくれ。悪いが今はあんたたちとのお喋りよりも、この事態を収束させる方が先だ……』

『ソフィアさんは、構成員さんたちの指揮を取るんですよね? だったら私たちが、ダヴィードを探しに行きます。レオナルド……』

『もちろん、君の望みであれば』

『よかった、ありがとう! ……ソフィアさん。ダヴィードのスキルがどんなものか、ご存知のことを教えていただけますか?』


 恐らく大通りで起きている惨事とは、昨日の公園と同じ光景なのだろう。

 ダヴィードのスキルによって生み出されたあの状況へ、無闇に接近しても勝算は無い。だが、ソフィアは俯いたままだ。


『……帰りなと言っただろう。他家の人間の出る幕じゃ、ないんだよ』

『ソフィアさん、気付いてますよね……!?』


 フランチェスカの中にも焦燥が生まれている。だからこそ祈るような気持ちで、ソフィアへと告げた。


『ダヴィードが洗脳されて、無理やりスキルを使わされていること。ダヴィードだって、その自覚が無いはずがない』

『……』

『きっと一刻を争います! 我に返ったダヴィードが、惨劇の原因が自分だって気付いたら、何をするか……!』

『……子供の頃から』


 俯いたソフィアが額を押さえ、苦々しい声で絞り出す。


『あの子は時々、おかしかった。親父が死んで以来、死んだ親父と同じように……』

(子供の頃から? それじゃあ、ダヴィードの洗脳が始まったのは、もしかして)


 クレスターニの手によって、幼少期から支配されていた可能性があるのだ。隣のレオナルドは表情を変えないが、何かを考え込むように沈黙している。


『ソフィアさん、だとしたら尚更です。今回大きな騒動を起こしたことで、ダヴィード自身が追い詰められる可能性があります!』

『これ以上、あの子に手を汚させないためなら。あの子の苦しみを長引かせるくらいなら、いっそこのまま、あの子の望む通りにさせるべきかもしれない』


 ソフィアが言い出したその言葉に、フランチェスカは顔を顰めた。


『しっかりしてください! 追い詰められているときに下した結論なんて、後で絶対に後悔します!!』

『だけど。私はあの子の苦しみを、どうしてやることも出来なかった』

『……フランチェスカ。もういい』


 レオナルドがあっさりと切り捨てて、フランチェスカに告げる。


『ソフィアはこのまま放っておこう。ダヴィードのスキルの情報が無いなら、力技でどうにかするだけだ』

(それじゃあ、レオナルドの負担が大きすぎる。それに……)


 ソフィアは深く項垂れてしまい、顔すら見えない。そして彼女は弱々しく、こんな風に呟くのだ。


『……姉として。あの子の唯一見せる願いが、終わらせたいという願いなのであれば……』

『……っ』


 フランチェスカがソフィアの前に立ちはだかると、レオナルドが不思議そうな顔をした。


『フランチェスカ?』


 けれどもレオナルドには返事をしない。フランチェスカは手を伸ばし、ソフィアの顔を両手で包み込むと、ぐっとこちらを向かせて声を上げた。


『――ソフィアさん!』

『!』


 間近から彼女を覗き込むフランチェスカに、ソフィアが息を呑んで目を丸くする。


『……お嬢さん……?』

『……ソフィアさんが想像しているような、悲しいことが……』


 優雅にバイオリンを弾くダヴィードの姿を思い出しながら、フランチェスカはソフィアに問いを向けた。


『それが、ダヴィードの「本物」の願いな訳がないでしょう……!』

『……っ!』


 瞳を揺らしたソフィアは何故か、フランチェスカよりも年下の女の子のように見える。


『ソフィアさんがラニエーリ家当主として指揮を取る間、私とレオナルドがダヴィードに会いに行きます。だからどうか、ダヴィードのことを教えてください』


 フランチェスカの左胸に燃えるのは、確かな憤りだ。真っ直ぐにソフィアを見据えると、ソフィアがこくりと喉を鳴らした。


『ソフィアさんが、ダヴィードを諦めるなら……』


 そしてフランチェスカは、ソフィアへの『脅迫』を口にしたのだ。


『――ラニエーリ家が、ここでダヴィードを手放すのなら、当家(カルヴィーノ)がダヴィードを貰い受けます』






『あくまな』スペシャルカウントダウン中!


レオナルドの魅惑のボイスを再生▶︎

https://x.com/ameame_honey/status/1793477054106886581?s=46

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