第24話 - 5.2 剣士から兵士へ ~揺れるな俺の心
ベルゼムには、迷いがあった。このような卑劣な手段から、果たして真意が伝わるのだろうか? 自分が軽蔑されるだけなら、まだ良い。トールの心に影を差しでもしたら、単なる愚行ではないか。
「ベルゼム、汚ねえぞ! てめー!」
お前の言う通りだ、カリム。殴ると言うなら、俺は黙って殴られる。言い訳もしない。後になってどう取り繕おうとも、ただ虚しく空回りするだけだ。
「止めろ、カリム! 完全に、油断した僕が悪い。ルールも決めていなかったし、反則をしたっていう訳じゃない」
トール、お前ってやつは……。
「けどよ! ベルゼム、あれが剣士の戦い方か!? 学院を去るトールに、何してくれてんだ、てめーはよ!」
……。
「ありがとう、ベルゼム。……戦場には、ルールも審判もない。だから君は、僕を剣術ではない形で負かしてくれたんだろ?」
す、すべて通じているというのか……。ベルゼムは、トールや皆からの軽蔑を覚悟していた。その覚悟が緩み、涙が込み上げてくるのが分かる。ベルゼムは力を込め、涙腺の崩壊を拒絶した。
「ありがとう!」
トールの熱い抱擁に、涙腺の防波堤はあえなく決壊した。この時、ベルゼムの心に別の炎が灯る。トールという漢に、自身の漢が反応する。
ベルゼムは慌てて、その思いを否定した。
ときめくな俺の心
揺れるな俺の心
俺の心の中には、ゴードン先生がいる
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