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第24話 - 1 剣士から兵士へ ~ミラン中将の来訪

 トール覚醒の報を受け、ミラン中将が来訪した。自身の命と、モスリナを救った功労者に対する礼である。ミラン自身にも倦怠感は残るが、動けない程ではない。


 ミランの口から、トールが意識を失った後が告げられる。増援の接近に、エディンバラ軍は撤退。増援部隊は、そのまま駐留。現在は、負傷者の治療に全力で当たっている。トールは左足の怪我は深かったものの、命に別状はなし。病床は他の重傷者に割り当て、自宅に運ばれたとの事。側には、志願したメアリーが付いていた。


「この度の活躍、見事であった! 改めて、礼を言う」


 ミランは、深々と頭を下げた。


「とんでもありません! 許可なく参戦してしまい、むしろ迷惑をかけたのではないですか?」


「何を言うか! 貴殿がいなければ、モスリナはエディンバラの手に落ちていたであろう。おそらく私の命もない。そのように謙遜されては、私の立場もなくなってしまう」


 改めて、ミランはトールの成した戦術的価値を説明した。ミランが討たれれば、オーシア軍はモスリナを放棄して撤退する手筈てはずであった事。ロメロ少将の敗退がなければ、城門を守り切れなかっただろう事など、あまりにその功績は大きい。


 またその流れで、ロメロの異能を受けて、なぜ反撃できたのかを問われた。


「僕にも、よく解りません。一瞬、全てが白く気を失った感覚がありましたが、目を覚ますと剣を振り上げる敵がいました。僕はそれが誰かも知らず、ただ反射的に剣を振ったんです」


 ……ただの個人差か? と、ミランは踏んだ。釈然としない部分もあるが、他に理解のしようもない。


 トールの肉体は、あまりに死の確信に慣れ過ぎている。『原始の威圧』を受けたトールの肉体は、「どうせまた死なない」と思った。現実に訪れないと高を括っている死に、以前のような恐怖はない。またどうせ生きるのだから、身体機能も早く復活させよう。それら肉体の思考の結果として、トールの反撃があった。


 しかしミランもトール自身も、この結論に到達し得る情報、足掛かりを持っていなかった。


「トールよ……勝つには勝ったが、喜んでばかりもいられん」


「はい、そう思います」


「過去、何度かあった小競り合いと言うには、規模が大き過ぎる。エディンバラと、大きないくさが始まるぞ」


 トールは、深く頷いた。エディンバラだけではない。他国の利害が絡んで戦禍が拡大すれば、複数の国と国が争う巨大な戦争にもなり得る。今、その大戦への一歩が踏まれているのかもしれない。


「聞けば貴殿は、クラーゼンの学生だそうだな。卒業後は、軍人になるのか?」


「はい、そうするつもりです!」


「そうか……、軍に入ったら私が口を利いてやろう。貴殿に相応しい戦い場所を用意してやる!」


「はい、ありがとうございます!」


「それまで、鍛錬に励めよ」


 ミランは立ち上がり、部屋を後にした。その後ろ姿を目で追いながら、僕に相応しい戦い場所って、どんなだろう? と、トールは思った。

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