第21話 - 5 攻城戦2 ~最終局面へと
戦闘開始から31時間後、エディンバラ兵は、遂に地上に降り立った。階段付近に拠点を作り、次第にその輪を広げていく。
オーシアは城壁の内側に縄梯子をかけ、城壁上に兵を供給する。城壁上のエディンバラ兵に左右から挟撃をかければ、敵を攻城塔と階段に分断できる。
だがその動きを見せた時、複数個所でエディンバラ兵の城壁越えが開始された。その対応に追われたオーシア兵は、中央の挟撃にまで手を回せなくなった。
城壁を取る争いは熾烈であったものの、局地的な戦いであった為に被害は軽微。だが最前線に立ったアトラス隊の損傷は大きく、4人が戦死、2人が戦闘不能に陥った。ロメロ少将は、ほぼ無傷で健在である。今は前線から引き、攻城塔内で座して休憩を取っている。
「さてと、アトラス隊の諸君! 戦況は、大きくこちらに傾いている。内側から城門を取れば、この戦は終いだ」
「ロメロ少将、もう勝ったも同然です!」
「ああ、勝ち戦だ。だが、ここで慎重に勝とうとするなよ? 追い込まれた相手に気迫負けして、無駄に命を落とすのは馬鹿馬鹿しい」
エディンバラ軍に、実は言うほどの優位は約束されていない。事前の情報でオーシアは5000人規模に過ぎないが、それが正しい保証はない。また増援が到着するまで余裕のある計算だが、それも計算上の話だ。事前にエディンバラから情報が漏れていれば、当然、到着は早まる。もしくは既に待機し、大軍が控えている可能性もある。今、城壁を攻略しつつある状況も、何かの罠であるかもしれないのだ。
いや、さすがに考え過ぎか……。と、ロメロは思い留まった。常識で考えれば、城壁の優位をあえて捨てる作戦など有り得ないし、モスリナ内に潜ませた間者からの知らせもない。大きな紛れはなく、順調に進行していると捉えるのが合理的だ。
「そろそろ、最後の大仕事と行こう!」ロメロは、立ち上がった。「今から、城門を奪いに行く! 楽をしている騎馬隊に、少しは働いてもらおう! 手柄を歩兵隊で独り占めしたと妬まれては、敵わないからな……」
周囲の兵から、笑いがこぼれる。モスリナ攻城戦は、いよいよ最終局面を迎える。
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