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第20話 - 4 攻城戦 ~トール、腰に掴まる正解を慎重に探る

「そろそろスピードを上げますから、しっかりと掴まっていてください」


 トールとメアリーは、モスリナに向けて出立しゅったつした。5分ほど小走りで来て、人馬とも慣れてきたところで、走りの強度を上げる。


 少し迷い、トールはくらの後ろ端を指先でぎゅっと掴む。気配を察したメアリーが振り返り、


「そこじゃありません! 私の腰に掴まってください!」


 そりゃ、そうだよな……と、トールは思った。こういうシチュエーションでは、普通に考えれば腰だ。くらの隙間を指先でなど、安全性の観点からは有り得ない。しかし万が一、腰などもってのほかだった場合、こちらがどう思われるか判らない。間違っても、変態、変質者などという評価を受ける訳には行かない。しかしやはり、腰で正解だった! これなら何の気兼ねもなく、正しい行動を選択できる。


 だが、腰に回そうとしたトールの手が止まった。いや、腰に掴まるとは言っても、どれくらいが正解なんだろう? あまりガッツリと行ったら、この必然性のある状況を利用した痴漢行為とも受け取られかねない。ここは控えめに……。


「もっと、しっかりです! 落ちますよ!?」


 そ、そうか……。安全性のためだから、ガッツリが正解なのは解っていた。しかし物事には必要十分という考え方もある。もしも先程の控えめな掴み方を必要十分と考えていたなら、それ以上は他の思惑を疑われる怖れがある。


「ごめん! こんな感じで良い?」


 ここでようやく、トールは正解にたどり着いた。両手に、強い弾力性を帯びた筋肉の感触が伝わってくる。女性の体に触れる緊張よりも、一剣士としての感嘆が勝った。


「はい、では飛ばしますよ!」


 メアリーは手綱を張って馬の頭を上げさせ、腹を軽く蹴った。一瞬の溜めの後、馬はスピードを上げる。上下運動が激しくなり、トールの腰を掴む手が強くなった。


「アッ!」


 と、メアリーの声が漏れる。


「悪い!」


 トールは慌てて手を離すも、バランスの悪さに、また慌てて手を戻した。


「ごめんなさい。大丈夫です! ちょっとだけビックリしただけです。危ないですから、手を離さないでくださいね!」


 冷静さを保つのに、メアリーはほぼ限界だった。考えないようにしても、どうしてもトールの手に意識が行ってしまう。事故を起こしたら、トールの身が危ない。責任重大なんだから、ちゃんとしなきゃ!

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