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第19話 - 6 第四次エディンバラ紛争 ~八機の攻城塔

 使節団襲撃事件から2日後、エディンバラ公国からオーシア外務省に、幾つかの要求が届けられた。


・襲撃事件のオーシア国内での捜査権を許可し、捜査に必要な執行力を認めること。

・双方、どちらが容疑者を捕えても、裁判と刑の執行はエディンバラにあること。

・過去、捜査権と身柄引き渡しに応じなかった賠償金として20億ОK(オーシアキッド)を支払うこと。

・現在、収監中のエディンバラ人を被害者とする殺人犯について、即刻に身柄を引き渡すこと。


 の4点である。オーシア外務省は、即答でこれらの要求を全て拒否。代わりに、オーシア側の傘下に入る形での、数人の捜査への参加を提案した。


 しかしエディンバラの使者は、これをその場で拒否。と同時に、宣戦布告。第四次エディンバラ紛争が勃発した。


 ――使者による宣戦布告と、およそ同時刻。オーシア王国、東の城塞都市・モスリナの監視塔は、遠方に接近する八機の塔を捉えた。その形状から、城壁攻略を目的とした攻城塔こうじょうとうと見られた。宣戦布告の事実を、モスリナは知る由もない。


 モスリナの領主であるニェン=モスリナ伯爵は、急遽、常在兵を招集した。現場指揮官レベルで、早急に会議が開かれる。


「やつら、あんな攻城塔こうじょうとうを隠し持っていたのか!?」

「今回の侵攻は、明らかに時間をかけて準備されたものです。完全に後手に回らされました……」

「攻城塔を城壁に近づかせるべきではない! 我が軍も打って出るべきだ!」

「馬鹿な! 城塞の優位を自ら捨てるつもりか!」

「使者を出して、少しでも時間稼ぎはできないものか?」

「無理でしょう。時間稼ぎなのは、見え透いています」

「くそっ、誰か情報を持っていないのか!?」


 そこにモスリナ常備軍最高指揮官、ミラン中将が到着する。


狼狽うろえるな! ここで我らが混乱しては、戦う前に敗北したも同じ。エディンバラの思う壺と知れ!」


 ミラン中将の一喝に、一同が静まり返る。元傭兵、現場の叩き上げで中将まで上り詰めた豪傑。50歳に差し掛かった今も、微塵にも衰えを見せない。依存を帯びた視線が、一身に集められる。


「少しでも弓の心得のある者には、弓を持たせよ! 歩兵は後方に待機! たった今、早馬も発った。援軍が着くまで、何としても守り切るぞ!」


 通常、要塞を守る側であれば、三分の一の戦力もあれば互角に戦える。敵は目視で15000~20000人。約5000人のモスリナ常在兵とは、一応のつり合いはある。守備に徹するなら、援軍到着まで持ち堪えるのも難しい課題ではない。


 しかし八機の攻城塔こうじょうとうを擁し、万全の準備を整えて来た相手である。その常道が通用する保証は、どこにもない。


 攻城塔こうじょうとうの機能は、大きく二つに分けられる。一つは、城壁に橋をかけて兵士を送り込むこと。もう一つは、高所から弓兵などを配置し、遠距離攻撃をしかけることである。これをどう使うつもりか? それとも、他の作戦の目くらましか?


 幸い、敵は足の遅い攻城塔に合わせて進軍して来ている。迎撃の準備も、次第に形になりつつあった。


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