第19話 - 3 第四次エディンバラ紛争 ~メアリー、フラカミニアを舞い踊る
「……女神が降臨されたようだ」
メアリーが舞い踊る姿に、マエストロも門下生も圧倒された。フラカミニアは、火と風の舞踊である。全身に炎をまとった女神が、炎を失せようとする暴風で煽られるも、逆にそれを糧として全てを焼き尽くす神話を表現する。
剣の師匠であるマグドネルは、メアリーとフラカミニアとの親和性に気付いた。酒場のショータイムで半裸のお姉さんが……という経緯はともかく、正にマグドネルの達見であった。
メアリーの特異な優位性は、骨をしならせる身体操作にある。生来の骨の柔軟性は、他人に模倣できるものではない。しならせた骨は、反動で鞭のように加速する。動き出しから加速してトップスピードに到達するのが早く、それが尋常ならざる体のキレを実現させる。
フラカミニアの静から動、突風に煽られた炎が激しく燃え盛る様は、メアリーの戦う姿を彷彿とさせる。フラカミニアはその急加速を、あらゆる体の部位を用いて、あらゆる体勢と方向で行う。メアリーの特異性を活かし引き出すに、これ以上の手段はないであろう。
その粗削りだが、激しく美しいメアリーの舞いに、マグドネルもまた魅了された。
――メアリー流、開眼近し。
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